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技術基準では電気設備の接地について、異常時の電位上昇、高電圧の侵入等による感電、火災等を防ぐため必要な箇所に地絡電流が確実の流れるように接地することが定められている(第10、11条)。
接地工事の種類と接地抵抗値、主な接地箇所については技術基準の解釈で第1表のように定めている(第17、24、28、29条)。
第1表 各種接地工事の規定
接地工事の種類 | 接地抵抗値 | 主な接地箇所 |
---|---|---|
B種接地工事 | 変圧器の高圧側又は特別高圧側の電路の1線地絡電流のアンペア数で下記を除した値に等しいオーム数以下 ・通常:150 低圧電路の対地電圧が150Vを超えた場合 ・2秒以内自動遮断:300 ・1秒以内自動遮断:600 |
高圧又は特別高圧の電路と低圧電路とを結合する変圧器の低圧側の中性点 (中性点がない場合は低圧側の1端子) |
A種接地工事 | 10Ω | 特別高圧、高圧の機器の鉄台、金属製外箱 |
C種接地工事 | 10Ω (0.5秒以下の遮断500Ω) |
低圧300Vを超える機器の鉄台、金属製外箱 |
D種接地工事 | 100Ω (0.5秒以下の遮断500Ω) |
低圧300V以下の機器の鉄台、金属製外箱 |
線路にはそれぞれの電線と大地間に静電容量Csがあるので、非接地方式でも1線路が地絡すると単相の場合は第1図、三相の場合は第2図のようにCsを通して地絡電流I0が発生します。このI0を容易に計算する方法のポイントを解説する。
(1) 単相2線式
第1図( a )から電源電圧V、無負荷とすると、I0は第1図( b )のように流れるので、
I0=V/(1/ωCs)=ωCs V (1)
鳳・テブナンの法則を用いると対地電圧はそれぞれのCsに1/2ずつ電圧が加わるので
第1図( c )からI0は、
I0=(V/2)/(1/2ωCs)=ωCs V (2)
このように同様になるが、単相の場合は鳳・テブナンの法則を使わず単相回路をそのまま使って計算できる。
(2) 三相3線式
第2図( a )から対地電圧は なので、鳳・テブナンの法則を用いるとI0は第2図(b)から、
次に三相回路で計算すると、地絡をa相とすると、線間電圧VabとVacがb相、c相のCsに加わるので、第2図( c )のようにb相、c相には、それぞれVabとVacより90°位相が進んだ電流I0´=ωCs Vが流れ、地絡点に戻ってくる。地絡電流I0は第2図( d )のベクトル図のように60°の位相差がある各相の電流のベクトル和となる。図からI0は両者の合成電流で(4)式となる。
このように結果は同様になるが、三相の場合は鳳・テブナンの法則を利用するのが効率的である。
高圧または特別高圧の電圧を低圧に変換する変圧器の場合、両者が混触すると低圧側に一次側の高電圧の対地電圧がそのまま進入するので、低圧側の設備はこの高電圧によって放電による火災や人の接触による感電などが発生するおそれがある。
これを防ぐために変圧器の低圧側の1線に施す接地工事をB種接地工事という。なぜ、接地を施すことにより安全を確保できるかについて解説する。
(1) 単相2線式
単相の場合は第3図(a)のようにB種接地抵抗RBと高電圧側の静電容量Csは第3図(b)のように直列接続された回路となる。地絡電流I0は(5)式中央となるが、RBは1/jωCsに比べると非常に小さいので、I0はRBを無視した(5)式の右側で(1)式と同様になる。
I0=V/(RB+1/jωCs)≒jωCsV(5)
すなわち、高圧または特別高圧側の1線地絡電流がそのまま低圧側に流れので、
B種接地抵抗RBの電圧V0は、
V0=RB×I0(6)
これをベクトル図で表すと第3図(c)のようにI0はVより90°進んでいるので、V0とCsの電圧Vsの関係は位相差90°で、V0はRBを小さくすればするほどVsが大きく、V0は小さくできる。技術基準の解釈では通常150Vと定めている。
(2) 三相3線式
鳳・テブナンの法則を利用すると対地電圧=相電圧 でB種接地抵抗RBと静電容量Csの関係は第3図(d)のような直列回路となるが、RBは1/j3ωCsに比べると非常に小さいので、無視するとI0は(3)式となり、V0は両者の積の(6)式となる。
このように変圧器の低圧側の1線にB種接地工事を施すことによって混触などによる高電圧側電圧の低圧側線路への進入を低く抑えることができる。
(3) 高圧または特別高圧線路の地絡電流I0計算
電験三種試験問題では、I0の計算方法として以下の2つがあります。
・電線と大地間の静電容量Csからは上記のように計算
・電気設備技術基準の解釈に基づく架空電線路、地中電線路の計算式による計算
ただし、V:公称電圧/1.1〔kV〕
L:架空線路の電線延長〔km〕
L´:地中電線路の線路長〔km〕
I0の計算結果の小数点は切り上げる。
(4) 抑制する電圧の上限Vm
・通常:150V
・1~2秒で遮断:300V
・1秒以下で遮断:600V
(5) B種接地抵抗RB〔Ω〕の計算
RB=Vm /I0〔Ω〕(8)
以上のことからRB〔Ω〕の算出にあたってはI0の計算とVmを(4)の3種類からどれを選ぶかが重要である。
A種接地工事は高圧、特別高圧の機器の鉄台、金属製外箱の接地であるから、高電圧の電線などが機器の鉄台などに接触した場合、第4図のようにA種接地抵抗RA(10Ω以下)とすると鉄台などに発生する電圧V0はB種接地抵抗と同様な回路の計算となる。
V0=RA×I0(9)
V0はRAが10Ω以下であるから第3図(c)と同様にVsが極めて大きく、V0は低い値になる。
これによって感電、火災などを防ぐことができる。
なお、A種接地工事の計算問題は出題されていない。
低圧側だけの電線路が対象になり、第5図(a)のように、電機子巻線など低圧線が電動機内などで外箱に接する現象が発生したとき、接地工事がない場合は外箱に線路の対地電圧がそのまま進入するので、これをできるだけ低く抑えるために外箱に施すのがC、D種接地工事である。接地工事を施すことによって、外箱が低圧線と接触したとき外箱に発生する電圧Vdは、第5図(b)に示すように対地電圧はV、B種接地抵抗RBとD種接地抵抗RDが直列の等価回路となるので、この回路を用いて計算をすると(10)式となる。
C種接地抵抗RCの場合も同様である。
過去の問題は以下のとおりで、ポイントを解説する。
(1)B種接地抵抗とD種接地抵抗の算出(H16)
(a) B種接地抵抗値RBの算出
以下の条件から算出
・低圧電路の使用電圧100Ⅴ、高圧側電路の1線地絡電流は8A
・高圧側と低圧側の電路の混触時に低圧電路の対地電圧が150Ⅴを超えた場合に、1秒以内で自動的に高圧電路を遮断する装置が設けられている。
(回答)
RB=Vm / I0〔Ω〕の(8)式から、I0は8A、Vmは3章(4)節で1秒以内の自動的遮断であるから600Vを選択して、
RB=Vm/ I0=600/8=75Ω
重要事項は3章(4)節から何を選択するかである。
(b) D種接地抵抗値RDの算出
電動機の完全地絡事故発生時に、電動機の金属製外箱の対地電位を30Ⅴを超えないようにするための金属製外箱に施すD種接地工事の最高限度値〔Ω〕の算出
(回答)
第5図及び(10)式から、Vdは30V、RBは75Ωであるから、
RD=0.3×75/0.7=32.14Ω
ポイントは第5図の等価回路の作成である。
(2)中性点非接地三相3線式高圧配電線の架空線、地中線のこう長、回線数から1線地絡電流I0、B種接地抵抗RBの計算(H18)
(a) 1線地絡電流I0の算出
・架空線 こう長15km 2回線、こう長10km 3回線
・地中線 こう長4.5km 2回線
(回答)
(7)式のV=公称電圧/1.1〔kV〕=6.6/1.1=6
L=架空線路の電線延長〔km〕=15×3×2+10×3×3=180km
L´=地中電線路の線路長〔km〕=4.5×2=9km
=1+1.73+8.5=11.23 から小数点を切り上げて 12A
重要事項は架空線路と地中線路の電線延長と線路長の扱いを間違えないことである。
(b) B種接地抵抗RBの算出
・高圧側と低圧側の電路の混触時に1秒以内で自動的に高圧電路を遮断する装置が設けられている。
(回答)
RB=Vm/I0〔Ω〕の(8)式から、I0は12A、Vmは3章(4)節で1秒以内の自動的遮断であるから600Vを選択して、
RB=Vm/I0 =600/12=50Ω
重要事項は3章(4)節から何を選択するかである。
(3)低圧三相回路の絶縁劣化による漏れ電流の計算(B種接地抵抗が関係する)(H21)
第6図のように低圧電線路の静電容量C、B種接地抵抗RB、劣化後の絶縁抵抗RG、相電
圧E、周波数fを用いた計算問題で、
(a) B種接地工事の接地線に流れる電流IBを表す式
(回答)
鳳・テブナンの法則に基づく等価回路は第7図となる。図から漏れ電流 は(11)式とな
る。
B種接地工事の接地線に流れる電流 はRBと3Cの並列回路であるから(12)式となる。
絶対値IBは(13)式となる。
= (13)
重要事項は鳳・テブナンの法則を用いて第7図の等価回路を作ることである。
(b) 電圧等各数値を定めたときのIBの計算
E=100〔V〕、f=50Hz、C=0.1μF、RG=100Ω、RB=15ΩとするときのIBの値
(回答)
(13)式に数値を導入して、
= A