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社団法人日本電気技術者協会 電気技術解説講座 文字サイズ変更ヘルプ
Presented by Electric Engineer's Association
電気設備技術基準・解釈の解説〔その2〕電路の絶縁と接地 総務担当理事 竹野 正二

「電気設備技術基準・解釈の解説〔その1〕」では、一般論として電気設備技術基準の変遷から規制できる事項、障害防止の考え方について述べ、具体的には電路や機器の使用電圧によって規制がどのように行われているかについて述べた。本講の〔その2〕では、電気設備技術基準(以下、「電技省令」という)において電路の絶縁と接地についてどのような規制が行われているかを紹介する。

〔1〕電路絶縁の原則

 電路は大地から絶縁していないと感電や漏電火災の原因となる。電技省令第5条第1項に、電路は、原則として大地から絶縁しなければならないことが規定されている。しかし、ただし書きにおいて、大地から絶縁しなくても良い場合が示されている。具体的には電気設備技術基準の解釈(以下、「電技解釈」という)第13条に規定されている。

 

 電技省令第5条第1項

 電路は、大地から絶縁しなければならない。ただし、構造上やむを得ない場合であって通常予見される使用形態を考慮し危険のおそれがない場合、又は混触による高電圧の侵入等の異常が発生した際の危険を回避するための接地その他の保安上必要な措置を講ずる場合はこの限りでない。

 

 電技解釈第13条に示された「大地から絶縁しなくても良い場合」

(1)保安上の必要から電路の一部を接地した場合の接地点

 ① 低圧電路に接地工事を施す場合の接地点

 ・需要場所の引込口の接地(接地側電線に接地抵抗値3Ω以下の水道管や鉄骨に接地すること)
電技解釈第18条第3項

 ・B種接地工事による接地点同第24条

 ・避雷器の接地点同第37条

 ・特別高圧架空電線路に施設する低圧機器の二次側電路の接地点同第109条

 ・アーク溶接機の被溶接材等に施すD種接地工事の接地点同190条第五号

 ② 電路の中性点や変圧器の安定巻線、ネオン変圧器の二次側に接地を施す場合の接地点
電技解釈第19第1項、第186条第1項第9号

 ③ 計器用変成器の二次側電路に接地を施す場合の接地点電技解釈第28条

 ④ 低圧架空電線の特別高圧架空電線と同一支持物に施設される部分に接地を施す場合の接地点
電技解釈第104条

 ⑤ パイプライン加熱用表皮電流加熱装置の小口径管(ボックスを含む)に接地を施す場合の接地点
電技解釈第197条第6項

 ⑥ 電子機器に接続する使用電圧が150V以下の電路、その他機能上必要な場所における電路の接地点
電技解釈第19条第6項

(2)絶縁できないことがやむを得ないもの

 ① 大地から絶縁しないで電気を使用することがやむを得ないもの。

 電力線搬送用結合リアクトル、電気さく用電源装置、エックス線発生装置のエックス線管用変圧器など、電気防食用の陽極、単線式電気鉄道の帰線等電路の一部

 ② 大地から絶縁することが技術上困難なもの

 電気浴器、電気炉、電気ボイラー、電解槽など

〔2〕電路の絶縁性能

 電路の絶縁の原則によって電路は大地から絶縁すべきことは、前述のように電気設備技術基準によって、明確に規定されているが、どの程度まで絶縁すればよいか、要するに、絶縁性能は電技省令及び電技解釈にどのように規定されているかについて紹介する。

(1)低圧電路の絶縁性能

 絶縁性能は電技省令第5条第2項に次のように規定されている。

 

 電技省令第5条第2項

 前項の場合にあっては、その絶縁性能は、第22条及び第58条の規定を除き、事故時に想定される異常電圧を考慮し、絶縁破壊による危険のおそれのないものでなければならない

 

 電技省令第5条第1項は前述のように絶縁の原則を定めており、この2項において「絶縁性能を規定しているが、具体的には第22条において低圧電線路中絶縁部分の電線と大地間及び線心相互間の絶縁抵抗は「漏えい電流が最大供給電流の2,000分の1を超えないこと。」及び第58条において電気使用における低圧電路の絶縁抵抗は次のように規定している。また電技解釈第14条第1項において、絶縁抵抗の測定が、電路を停電することができない場合など困難な場合は、漏えい電流が1mA以下の場合は、絶縁性能が保たれているとされている。

 電技省令第58条の表より

電路の使用電圧 絶縁抵抗
300V以下 対地電圧150V以下
(100/200V)
0.1MΩ以上
対地電圧150V超過
(三相200V)
0.2MΩ以上
300V超過
(三相400V)
0.4MΩ以上

(2)高圧・特別高圧の絶縁性能

 低圧電路の絶縁性能は前述のように電技省令により規定されているが、高圧以上の電路については、電技省令第5条第2項に基づき電技解釈第14条から第16条までにおいて絶縁耐力として規定されている。第14条は低圧電路の絶縁性能は電技省令によることとされ、第15条は高圧と特別高圧電路の耐圧試験の原則的な試験電圧と10分間の耐圧時間を規定している。第16条は変圧器等の機器の試験電圧だけでなく、耐圧試験の方法まで含めて規定されている。これらの規定は、必ずしも耐圧試験をすることを規定しているものではない。したがって、これと同等の絶縁性能があると判断される場合は耐圧試験の省略が認められている。

 具体的には、第16条第1項及び第6項において、それぞれ日本電気技術規格委員会規格JESC E 7001に規定されている「3・2 変圧器の絶縁耐力の確認方法」又は「3・3 器具等の電路の絶縁耐力の確認方法」により絶縁性能が確認できれば耐力試験電圧は省略できるとしている。これらJESCの規定では、変圧器や機器等がJISや電気学会規格JECに適合していることが確認でき、かつ、機器の使用電圧と同等の電圧で10分間加えて試験(常規耐圧試験)することによって確認することとしている。

 高圧・特別高圧電路の耐圧試験の試験電圧〔電技解釈第15条より〕

最高使用電圧(E) 試験電圧
① 7kV以下 E×1.5
② 7kVを超え60kV以下 E×1.25
③ 60kVを超えるもの
〔中性点非接地式電路に接続するもの〕
E×1.25
④ 60kVを超えるもの
〔中性点接地式電路に接続するもの〕
E×1.1
(注)170kVを超える直接接地電路に接続するものなどは省略  

〔3〕接地工事の種類と接地抵抗

 接地には、保安用接地、機能用接地、雷保護用接地、雑音対策用接地、静電気防止用接地、電気防食用接地など目的に応じていろいろな接地があるが、電技省令では電路など充電部に施す接地と機器の外箱など非充電部に施す接地に分けられる。

 充電部に施す接地は、大地絶縁の原則で述べたように、規定によって認められている点以外の箇所には接地するができない。そして接地の方法を誤れば、感電や火災の原因になるので、その施設方法を詳細に規定されている。

(1)電技省令による規定

 電技省令には接地に関し、第10条及び第11条で、基本的な考え方が規定されている。また、第12条において高低圧混触による被害を防止するためのB種接地の規定をしている。

 

 第10条(電気設備の接地)

 電気設備の必要な箇所には、異常時の電圧上昇、高電圧の侵入等による感電、火災その他人体に危害を及ぼし、又は物件に損傷のおそれがないよう、接地その他の措置を講じなければならない。ただし、電路に係る部分にあっては、第5条第1項の規定に定めるところによらなければならない。

 

 第11条(電気設備の接地の方法)

 電気設備に接地を施す場合は、電流が安全かつ確実に大地に通ずることができるようにしなければならない。

 

 第12条(特別高圧電路等と結合する変圧器等の火災等の防止)

 高圧又は特別高圧の電路と低圧の電路とを結合する変圧器は、高圧又は特別高圧の電路の侵入による低圧側の電気設備の損傷、感電又は火災のおそれがないよう、当該変圧器における適切な箇所に接地を施さなければならない(ただし書き省略)。

 

 これら接地工事関係の電技省令に基づき、電技解釈では具体的に接地工事の種類に応じて、接地抵抗値や施設方法を規定している。

(2)電技解釈第17条

 第17条では、接地工事をA、B、C、Dに分類し、同条の「17‐1表」に接地抵抗値と接地工事の細目を規定している。

 A種、C種及びD種の接地は、いずれも非充電部に施す接地で、A種は高圧以上の機器等に、C種は300Vを超える低圧の機器等に、D種は300V以下の低圧の機器等に施される接地である。

 

  接地抵抗値 接地が要求される対象物の例
A種接地工事 10Ω以下 高圧以上の機器等
C種接地工事 10Ω以下 300Vを超える低圧の機器等
D種接地工事 100Ω以下 300V以下の低圧の機器等

 

 (注)C種接地工事とD種接地工事の特例

  低圧電路において,当該電路に地絡を生じた場合に0.5秒以内に自動的に電路を遮断する装置を施設するときは,500Ω以下とすることができる。

 〔B種接地工事の接地抵抗値〕

 B種接地工事は充電部に施す接地で、高低圧の電路が混触した場合に、低圧側の電路の絶縁破壊による災害を防止する目的で行われるもので、その接地抵抗値は、次のように決められている。

 ① 変圧器の高圧側又は特別高圧側の電路の1線地絡電流のアンペア数で150を除した値に等しいオーム数

 ② 変圧器の高圧側の電路又は使用電圧が 35,000V以下の特別高圧側の電路と低圧側の電路との混触により低圧電路の対地電圧が150Vを超えた場合に,1秒を超え2秒以内に自動的に高電圧側電路を遮断する装置を設けるときは 300

 ③ 1秒以内に自動的に高電圧側電路を遮断する装置を設けるときは 600

 〔1線地絡電流の計算〕

 1線地絡電流の値は、電技解釈第17条第2項に規定されていて、実測値によるか高圧電路の場合は示された計算式により求める。計算式は中性点の接地方式ごとに示されている。我が国では高圧配電線はほとんどが非接地なので、非接地の場合の式を掲げておく。高圧配電線がケーブルである場合とない場合又はその両方がある場合とで計算式は異なる。

 高圧電路の1線地絡電流の計算式(非接地方式)

① 電線が主ケーブル以外のとき
formula001
formula001
② 電線が主ケーブルのとき
formula002
formula002
③ ケーブルとケーブル外の電線とからなる電路のとき
formula003
formula003

 (注)I1は、1線地絡電流(A)

    Vは、電路の公称電圧を1.1で除した電圧(kV)

    Lは、高圧電路の電線の延長(km)

    L´は、高圧電路のケーブルの延長(km)

 

(3)共用・連接接地(電技解釈第18条第2項)

 A、B、C及びD種の接地を連接することについては、電技解釈第18条第2項に、次のように規定されている。高圧受電設備規程ではこの条文をもとに、A種からD種までの接地をビル等の鉄骨を接地極の接地抵抗値が2Ω以下の場合は共用接地とすることを認めている。

 〔電技解釈第18条第2項〕

 3 大地との間の電気抵抗値が2Ω以下の値を保っている建物の鉄骨その他の金属体は,これを非接地式高圧電路に施設する機械器具の鉄台若しくは金属製外箱に施すA種接地工事又は非接地式高圧電路と低圧電路を結合する変圧器の低圧電路に施すB種接地工事の接地極に使用することができる。

 

 電技解釈第18条第1項は、平成23年7月の改正により追加されたもので、ビルの鉄骨等を接地極として使用し、ビル内の全ての導体を等電位ボンディングすることにより、A種からD種までの接地を強要とすることが規定された。