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平成11年の電気事業法によって、国による関与の最小限化の観点から、使用前検査及び定期検査については公共の安全の確保上特に重要な原子力発電設備等を除き、国の検査が廃止された。これに代えて次に述べる使用前自主検査等の法定自主検査制度が取り入れられた。
この講座の=法規=現場実践・解説コース「電気事業法に基づく受電設備の工事計画の届出」において、受電設備は電圧1万V以上のものに対して事前届の対象となることを説明したが、この届出をした設備に対しては、法定自主検査(使用前自主検査)が義務づけられている。同時に、国は設置者による法定自主検査の実施に係る体制について第三者的に審査することによって設置者の自主保安を補完する観点から「安全管理審査制度」が導入された。
受電設備の工事計画を始めてから使用開始までのフローを示すと第1図のようになる。
(1) 使用前自主検査とは
設置者自らが行う法定自主検査には「使用前自主検査」、「溶接事業検査」、「定期事業者検査」の3種類があるが、受電設備には使用前自主検査が適用される。
使用前自主検査とは、電気事業法第48条第1項の規定による工事計画の届出をした事業用電気工作物に対し、その使用の開始前に当該電気工作物について自主的に検査を行い、当該電気工作物が届け出た工事計画に従って完成しているか、技術基準に適合していることを確認するものである。
工事計画の設置や変更の工事の届出を行った事業用電気工作物であっても、電気事業法施行規則(以下、「施行規則」という。)第73条の2の2で規定されている設備については、使用前自主検査を行わずに使用を開始することができる。受電設備(変電所)では第1表に掲げる設備が該当する。
第1表 使用前自主検査をしなくても使用できる設備(変電所の場合)
① 変更の工事を行う変電所に属する電力用コンデンサ
② 変更の工事を行う変電所に属する分路リアクトル又は限流リアクトル
③ 非常用予備発電装置
④ 第65条第1項第2号に規定する工事を行う事業用電気工作物(別表第4に記載された公害防止関係の事業用電気工作物)
⑤ 試験のために使用する事業用電気工作物
(2) 使用前自主検査の結果の記録
電気事業法第50条の2第1項によって設置者は使用前自主検査の結果を記録して、保存しておく義務が課せられている。使用前自主検査の結果の記録については、第2表に掲げる11項目を記載する(施行規則第73条の5第1項)。
第2表 使用前自主検査の結果の記録
① 検査年月日
② 検査の対象
③ 検査の方法
④ 検査の結果
⑤ 検査を実施した者の氏名
⑥ 検査の結果に基づいて補修等の措置を講じたときは、その内容
⑦ 検査の実施に係る組織
⑧ 検査の実施に係る工程管理
⑨ 検査において協力した事業者がある場合には、当該事業者の管理に関する事項
⑩ 検査記録の管理に関する事項
⑪ 検査に係る教育訓練に関する事項
「記録の保存期間」は第2表の11項目のうち、①から⑥の記録については5年間、⑦から⑪の記録については当該使用前自主検査を行った後最初の安全管理審査の通知を受けるまでの期間とされている(施行規則第73条の5第2項)。
(3) 需要設備の使用前自主検査
(a) 使用前自主検査の方法
使用前自主検査の方法については通商産業省資源エネルギー庁公益事業部電力技術課長通達「電気事業法施行規則第73条の4の解釈について」(平成18年9月29日 平成18・07・25原院第2号)で検査方法及び判定基準が具体的に示されている。需要設備については、通達中「7.需要設備」で「第3表」に掲げる9項目について、検査方法及び判定基準が示されている。その詳細な内容を第4表に載せておく。
第3表 需要設備(受電設備)における使用前自主検査の項目
① 外観検査
② 接地抵抗測定
③ 絶縁抵抗測定
④ 絶縁耐力試験
⑤ 保護装置試験
⑥ 遮断器関係試験
⑦ 負荷試験(出力試験)
⑧ 騒音測定
⑨ 振動測定
第4表 「電気事業法施行規則第73条の4の解釈について」の抜粋(需要設備)
適切な使用前自主検査の方法
平成12年6月30日12資公電技第15号
最終改正 平成18年9月29日 平成18・07・25原院電第2号
電気事業法施行規則第73条の4に規定する適切な使用前自主検査の方法について、下記のとおり具体的に示したので、了知されたい。なお、同条に規定する適切な使用前自主検査の方法は、この解釈に示されたものに限定されるものではなく、同条に照らして十分な保安水準の確保が達成できる技術的根拠があれば、同条に適合するものと判断するものである。
記
7. 需要設備
( 1 ) 外観検査
( a ) 検査方法
検査対象となる電気工作物の設置状況について、工事の計画に従って工事が行われていること及び電技に適合していることを目視により確認する。なお判定基準の①、②、③、⑨、⑫、⑬を確認する場合は書類等によって確認することもできる。
( b ) 判定基準
① 必要な箇所に所定の接地が行われていること(電技解釈第17条~第19条、第21条~第22条、24条~第25条、第27条~第29条、第37条)
② アークを発生する器具と可燃性物質との離隔が十分であること(電技解釈第23条)
③ 高圧又は特別高圧用の機械器具の充電部が、取扱者が容易に触れないように施設されていること(電技解釈第21条、第22条)
④ 高圧及び特別高圧の電路において電線及び電気機械器具を保護するため必要な箇所に過電流遮断器が施設されていること(電技解釈第34条、第35条)
⑤ 高圧又は特別高圧電路中の過電流遮断器の開閉状態が容易に確認できること(電技解釈第34条)
⑥ 高圧及び特別高圧の電路に地絡を生じた時に自動的に電路を遮断する装置が必要な箇所に施設されていること(電技解釈第36条)
⑦ 高圧及び特別高圧の電路において、架空電線の引込口及び引出口又はこれに近接する箇所に避雷器が施設されていること(電技解釈第37条)
⑧ 変電所、開閉所若しくはこれらに準ずる場所(以下「変電所等に準ずる場所」という)の周囲に、柵、塀等が施設されており、出入口に旋錠装置及び立入禁止表示が施設されていること(電技解釈第38条)
⑨ 変電所等に準ずる場所の周囲の柵、塀等の高さと柵、塀等から特別高圧の充電部までの距離との和が規定値以上であること(電技解釈第38条)
⑩ 中性点直接接地式電路に接続する変圧器には、油流出防止設備が施設されていること(電技第19条第8項)
⑪ 特別高圧用の変圧器、電力用コンデンサ又は分路リアクトル及び調相機に必要な保護装置が施設されていること(電技解釈第43条)
⑫ ガス絶縁機器等の圧力容器が規定どおり施設されていること(電技解釈第40条)
⑬ 検査の対象となる電気工作物が工事計画書の記載事項どおりに施設されていること
( 2 ) 接地抵抗測定
( a ) 検査方法
次に示す接地方法に応じて以下の測定方法により接地抵抗値を測定する。
① 機器毎に接地する「単独接地」:直読式接地抵抗計による測定
② いくつかの接地箇所を連絡して接地する「連接接地」;直読式接地抵抗計による測定
③ 接地線を網状に埋設し、各交流点で連接する「網状(メッシュ)接地」;電圧降下法による測定
なお、連接接地法及びメッシュ接地法により接地されている場合であって、変更の工事の場合は、当該設備と既設接地極・網との導通試験に替えることができる。
( b ) 判定基準
接地抵抗値が電技解釈第17条又は第24条第1項第2号で規定された値以下であること。
( 3 ) 絶縁抵抗測定
( a ) 検査方法
① 低圧電路の絶縁測定は特に必要と認められる回路について行うものとする。
② 高圧及び特別高圧電路の絶縁抵抗測定は絶縁耐力試験の回路について行う。
③ 絶縁抵抗の測定は、JIS C1302「絶縁抵抗計」に定められている絶縁低抗計を使用するものとし、低圧の機器及び電路については、500V絶縁抵抗計、高圧又は特別高圧の機器及び電路については、1,000V絶縁抵抗計を使用して測定する。
④ 絶縁抵抗値は「1分値」を採用するものとする。ただし、被測定機器の静電容量が大きいため(長い地中ケーブル等を含む場合)短時間では絶縁抵抗計の指針が静止しないときは、指針が静止後の値を採用する(3分以上測定を継続する必要はない)。
( b ) 判定基準
① 低圧電路の電線相互間及び電路と大地との間の絶縁抵抗は、電路の使用電圧が300V以下で対地電圧が150V以下の電路では0.1MΩ以上、300V以下で対地電圧が150Vを超えるものはO.2MΩ以上、300Vを超える低圧電路では0.4MΩ以上であること。
② 高圧及び特別高圧の電路については、大地及び他の電路(多心ケーブルにあっては他の心線、変圧器にあっては他の巻線)と絶縁されていることが確認できること。
( 4 ) 絶縁耐力試験
( a ) 検査方法
電力回路や機器の使用電圧に応じて電技解釈第14条~第16条に定められている試験電圧を印加する。また、特別高圧の電路、変圧器の電路及び器具等の電路の絶縁耐力を電技解釈第15条、第16条第1項第2号又は、第16条第6項に基づき絶縁耐力試験を実施したことを確認できたものについては、常規対地電圧を電路と大地との間に連続して印加することができる。なお、常規対地電圧とは、通常の運転状態で主回路の電路と大地との間に加わる電圧をいう。
( b ) 判定基準
試験電圧を連続して10分間加えた後、絶縁抵抗測定を行い絶縁に異常のないこと。また、電技解釈第15条、第16条第1項2号又は、第16条第6項によって実施した場合には、常規対地電圧を連続して10分間加え、絶縁に異常がないこと。
( 5 ) 保護装置試験
( a ) 検査方法
電技解釈第34条、第36条、第43条で規定される保護装置ごとに、関連する継電器を手動等で接点を閉じるか又は実際に動作させることにより試験する。
( b ) 判定基準
関連する遮断器、故障表示器、警報装置、遮断器の開閉表示などが正常に動作すること。
( 6 ) 遮断器関係試験
( a ) 検査方法
① 付属タンク(アキュームレータを含む。以下同じ。)の容量試験遮断器又は開閉器について、操作用駆動源(圧縮空気、圧油等)の付属タンクの供給元弁を閉じて、圧縮空気等が補給されない状態で入切の操作を連続して1回以上(再閉路保護方式の場合は2回以上)行い、当該機器の動作、開閉表示器の表示を確認する。なお、遮断器に不完全投入(開放)を防止するための鎖錠装置がある場合は、付属タンクの圧力を変動させて鎖錠及び復帰用圧力継電器の動作を行わせ、当該機器の動作、開閉表示器の表示を確認する。
② 駆動力発生装置自動始動停止試験
付属タンクの排出弁を静かに開いて圧力を徐々に下げ駆動力発生装置を自動始動させ、その時の圧力を測定する。駆動力発生装置が始動した後に排出弁を閉鎖して圧力を徐々に上げ、運転中の駆動力発生装置が自動停止する時の圧力を測定する。
③ 駆動力発生装置付属タンク安全弁動作試験
付属タンクの出口止め弁を閉めて、駆動力発生装置を運転して圧力を徐々に上げ、その付属タンクに設置してある安全弁の吹出圧力を測定する。
( b ) 判定基準
① 設定どおりの動作が行われること。
② 自動始動及び自動停止が設定圧力の範囲内で行われること。
③ 安全弁の吹出圧力が付属タンクの最高使用圧力以下であること。
( 7 ) 負荷試験(出力試験)
( a ) 検査方法
当該変圧器の定格容量又は通常の運転状態における負荷に保持して変圧器の各部の温度が飽和状態になるまで連続運転し、変圧器の異常な温度上昇、異常振動、異音等の有無を計器及び所内巡視等の方法により確認する。ただし、電技解釈第20条に基づき温度上昇試験を実施したことを確認できたものについては、現地での負荷試験は省略できるものとする。
( b ) 判定基準
試験状態において温度上昇値に異常が認められないこと。
( 8 ) 騒音測定
( a ) 検査方法
騒音規制法第2条第1項に規定する特定施設を設置する変電所等に準ずる場所であって、同法第3条第1項に規定する指定地域内に存する変電所等に準ずる場所について、JIS Z8731に規定する方法によって測定を行う。
( b ) 判定基準
騒音規制法第4条第1項又は第2項の規定による規制基準に適合していること。
( 9 ) 振動測定
( a ) 検査方法
振動規制法第2条第1項に規定する特定施設を設置する変電所等に準ずる場所であって、同法第3条第1項に規定する指定地域内に存する変電所等に準ずる場所について、特定工事等において発生する振動に関する基準に規定する方法によって測定を行う。
( b ) 判定基準
振動規制法第4条第1項又は第2項の規定による規制基準に適合していること。
(b) 使用前検査要領の作成
使用前自主検査が終了したら使用前安全管理審査を受ける必要があるが、安全管理審査をどのようにして行うかを規定した要領が出されており、その要領に示されている検査要員、使用する測定器の操作等、試験条件、検査方法及び判定基準をとりまとめた「使用前検査要領」を作成する必要がある。これらの作成に関しては、当局から要領で示す「使用前安全管理審査要領」において、項目ごとに留意事項が示されているのでこれを参考に作成する。
(1) 使用前安全管理審査の申請
使用前自主検査が終了後1か月以内に使用前安全管理審査を受ける必要がある。次に示す「様式第52の2」により、使用前安全管理審査申請書を提出する。 これには「システム安全管理審査」と「個別安全管理」があるが、自家用電気工作物の場合は個別安全管理審査で行われる場合がほとんどである。
「様式第52の2」
備考1 直近の使用前安全管理審査が終了した日以降使用前自主検査を行った電気工作物の概要の欄には、法第48条第1項の規定による届出年月日を付記すること。
2 用紙の大きさは、日本工業規格A4とすること。
3 氏名を記載し、押印することに代えて、署名することができる。この場合において、署名は必ず本人が自署するものとする。
(2) 安全管理審査実施要領
安全管理審査については、平成12年6月30日に通商産業省資源エネルギー庁公益事業部電力技術課長から通達(12資公電技第14号)が出されている。個別管理実施者及び法定自主検査の工程中に係る審査基準及び審査項目を掲げておく。これは安全管理審査実施要領の一部である。
安全管理審査実施要領(抜粋)
個別管理実施者及び法定自主検査の工程中に係る審査基準及び審査項目
個別管理実施者及び法定自主検査の工程中に係る安全管理審査を立会い又は記録確認により行う場合の審査基準は次のとおりとする。
1.検査の方法等
( 1 ) 検査要領
技術基準及び関係通達を基に日本工業規格、民間規格等も参考にしながら、検査の方法及び判定基準を適切に決定するとともに、検査要員、使用する測定器の操作等、試験条件、検査の方法及び判定基準をとりまとめた検査要領が適切に定められていること。
( 2 ) 検査要員
検査の内容に応じ操作、観察、測定、記録等の検査要員を必要な数配置するとともに、それぞれの連携がとられていること。また、検査要員が、検査の内容に応じ必要とされる能力を有すること。
( 3 ) 測定器等
使用する測定器、試験装置等の仕様が検査の内容に応じ適切なものであるとともに、所要の校正、点検等を行っていること。
( 4 ) データのサンプリング
データの採取をサンプリングにより行う場合においては、統計的手法の適用も含め適切な方法を検討し、その結果を検査要領に反映すること。
2.検査の実施
検査の実施状況が、検査要領に従ったものであること及び下記の事項に適合すること。
( 1 ) 検査の実施環境
検査実施場所の気温、湿度、騒音、振動等の環境条件は、検査の内容に応じ適切なものであること。
( 2 ) データの採取及び記録
データの採取及び記録が適切に行われていること。
( 3 ) 不具合発生時の処置
異常データの発生等不具合発生時の処置が適切にとられ、その結果が記録されていること。
3.結果の評価
検査結果を判定基準に照らし適切に評価していること。
検査結果が判定基準を満足しないか、又はこれが不明な場合は、その原因を検討し補修、取替え等の措置を講じるとともに、所要の再検査を実施していること。また、これらの内容を記録していること。