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社団法人日本電気技術者協会 電気技術解説講座 文字サイズ変更ヘルプ
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自家用電気工作物の竣工検査 (株)高岳製作所 統括安全部 部長 水上 明

一定内容の自家用電気工作物の電気工事を行った場合、完成時に、それが工事計画図書や法令等に合致して施工されているか、また設備が必要な能力を有しているか等を設置者が自主的に確認するために、点検、試験等による竣工検査が行われます。この竣工検査の項目と内容について解説します。
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01.自家用電気工作物の定義

  電気工作物は、「一般用電気工作物」と「事業用電気工作物」に分けられている。「自家用電気工作物」は事業用電気工作物の内、電気事業の用に供する電気工作物以外のものと定義されている。


02.自家用電気工作物の保安体制

 自家用電気工作物の電気保安体制は自主保安体制が基本となっている。すなわち、自家用電気工作物の設置者は保安規程を遵守し、電気主任技術者(外部委託の場合は、保安管理業務受託者)を電気設備の保安業務に従事(外部委託の場合は、保安管理業務の受託契約による)させ、常に電気設備を「電気設備に関する技術基準」に適合させるよう維持しなければならない。


03.自家用電気工作物の竣工検査

 自家用電気工作物の電気工事を行った場合、完成時に、それが工事計画図書や法令等に合致して施工されているか、また設備が必要な能力を有しているか等を設置者が自主的に確認するために、点検、試験等による竣工検査が行われる。この竣工検査の検査項目は、次項の事業用電気工作物の法定自主検査項目を基本として適用されている。


04.事業用電気工作物の法定自主検査(使用前自主検査)

 電気事業法第48条第1項の規定に基づき、設置又は変更の工事の届出をした事業用電気工作物は、その工事について経済産業省令で定める工事の工程ごとに、法第50条の2第1項に定める自主検査を行い、その結果を記録しておかなければならない。また、その後、経済産業大臣等による安全管理審査を受けることになっている。高圧自家用電気工作物においては、最大電力1,000kW以上の需要設備の新設等が対象となる。
 事業用電気工作物には、変電所、送電線路(架空及び地中)及び需要設備等があるが、その法定自主検査基準は、「電気事業法施行規則第73条の4の解釈について」(平成24年11月30日付20121122商務局第3号)で示されている。
 需要設備については、第1表の項目について行うことと定められている。


05.自家用電気工作物の竣工検査の方法と判定基準

 

 需要設備を例に、竣工検査の検査方法と判定基準の概要を以下に説明する。

(1) 外観検査

 電気工作物の設置状況について、目視による検査又はメジャー等による測定により外観検査を行い、工事計画に従って工事が行われ、かつ技術基準等に適合しているかを確認する。主な確認事項は第2表のとおりである。

(2) 接地抵抗測定

 接地抵抗の測定は、電気機器及び設備の各接地抵抗が技術基準に定められている値以下であり、かつその工事方法が技術基準に適合しているかを確認するために行う。接地抵抗は一般的に直読式接地抵抗計(アーステスタ)で測定する。メッシュ接地の場合は、電圧降下法によって測定する。接地抵抗値の判定基準は、第3表に示す技術基準の解釈第17条「接地工事の種類及び施設方法」による。

(3) 絶縁抵抗測定

(a) 低圧電路

 低圧電路の絶縁抵抗測定は通常500V絶縁抵抗計(メガー)を使用して各相間及び大地間を測定する。絶縁抵抗値は低圧電路の漏れ電流を1mA以下にすることを基本として、技術基準第58条で第4表のように定められている。ただし、第4表の値は最低限の値である。新設電路では通常、メガーの有効測定範囲の最大値近くを示すはずなので、もし低い値を示した場合は原因を確認する。 なお、メガーの電圧は負荷設備の定格電圧に応じて、250、125、100V用等を選定し、メガーの電圧によって負荷設備に損傷が生じないように注意する。

(b) 高圧電路

 高圧の電路及び機器の絶縁抵抗測定は1,000V以上のメガーを使用し、絶縁耐力試験の回路ごとに測定する。高圧及び特別高圧の電路については、大地及び他の電路(多心ケーブルにあっては他の心線、変圧器にあっては他の巻線)と絶縁されていることが確認できればよいとされている。なお、絶縁抵抗値の目安としては、6kV回路では6MΩ以上を確保するようにする。

(4) 絶縁耐力試験 

 絶縁耐力試験は現場に設置された電力機器の絶縁が、電路の常規電圧及び電路の事故時や電路の遮断時に発生する異常電圧に対して十分耐えるかを確認するために行う。
 絶縁耐力試験は高圧以上の機器についてすべて実施される。試験の方法は技術基準の解釈第15条、第16条までに定められており、その内、電路の絶縁試験電圧は第5表のようになっている。

 試験電圧の算定の基礎となる最大使用電圧とは、通常の運転状態でその回路に加わる線間電圧の最大値をいい、事故時の異常電圧を除く軽負荷時又は無負荷運転の場合の電圧変動を考慮して定められている。1,000V以下の電路ではその電路の公称電圧の1.15倍、1,000Vを超える電路ではその電路の公称電圧の1.15/1.1倍とされている(電技解釈第1条)。
 判定基準は試験電圧を連続して10分間加えた後、メガー測定を行い、絶縁に異常がないこととされている。
 なお、技術基準の解釈第15条第1項第4号により特別高圧の電路に係わる絶縁耐力においては、JIS、JECに基づき工場において耐電圧試験を実施したものは、技術基準における絶縁性能を満足しているものとし、現地据付状態における最終確認として常規対地電圧を10分間印加することでよいとされている。常規対地電圧とは、通常の運転状態で主回路の電路と大地との間に加わる電圧をいう。

(5) 保護装置試験

 保護装置試験は機器や設備に異常を生じた場合、これを検出して継電器が動作することによりシーケンス上関連する遮断器の動作及び故障表示、警報が正しく行われるかを確認するために行う。試験の方法は継電器の単体特性試験と、継電器を手動又は実作動(模擬信号によることを含む)させ、関連する保護装置の連動試験を行う。判定基準は保護継電器単体特性試験では継電器の動作特性がJIS、JEC等の基準値内にあり、かつメーカーの管理値内にあること、保護連動試験では関連する遮断器が確実に動作し、故障表示、警報が正しく行われることである。

(a) 保護継電器単体特性試験

 需要設備に使用される保護継電器には、過電流継電器、地絡継電器、電圧継電器、比率差動継電器など各種あるが、例として第6表に過電流継電器、第7表に地絡継電器の試験項目と判定基準を示す。

(b) 保護連動試験

 第1図は受電回路の一部分の例を示したものであるが、これに対する保護連動試験の記録例を第8表に示す。過電流継電器の場合、各相の限時要素と瞬時要素を動作させ、遮断器の動作及び故障表示、警報を確認する。

(6) 遮断器関係試験

 遮断器関係試験は遮断器の開閉動作と開閉表示の確認及びシーケンス図に基づいて断路器とのインタロックが正常に行われることを確認する。第1図に示す回路に対する遮断器関係試験の記録例を第9表に示す。

(7) 負荷試験

 負荷試験は需要設備の接地抵抗測定、絶縁耐力試験、保護装置試験、遮断器関係試験等の諸試験を行った後、設備を電力系統に連係した場合、その設備が電力系統において認可どおりの能力が発揮できることを確認するために行う。負荷試験の例としては特別高圧変圧器の温度上昇試験がある。変圧器の温度上昇試験は変圧器を全負荷で連続運転し、異常な温度上昇、異常振動及び異常音等がないことを確認する。また、変圧器の絶縁油の温度上昇値がJECの規定値内にあること、及びメーカーの保証値(工場試験値内)を超えないことを確認する。第10表に変圧器の温度上昇限度を示す。なお、技術基準の解釈第20条の3(電気機械器具の熱的強度)により、メーカーの工場において、日本電気技術規格委員会規格JESC E 7002-2010(電気機械器具の熱的強度の確認方法)の規定に基づき温度上昇試験を実施したものは、現地における試験を省略することができる。現地試験の方法としては実負荷法、等価負荷法及び返還負荷法があるが、参考として等価負荷法による試験例を以下に説明する。

<等価負荷法による変圧器の温度上昇試験>

 等価負荷法は変圧器の一方の巻線を短絡し他方の巻線から変圧器のインピーダンス電圧を印加すると、双方の巻線に変圧器の定格電流が流れることを利用したものである。この場合、定格電圧を印加しないことから無負荷損が供給されないため、全損失(負荷損+無負荷損)を負荷損に換算して供給する。つまり、試験時の電流は定格電流よりも無負荷損を補正する分だけ多く流すようにする。第2図に等価負荷法による試験回路図例を示す。


 試験時の供給電流 formula001formula001 〔A〕は、

formula002
formula002

 ここに、 formula003formula003 :変圧器の定格電流〔A〕
      formula004formula004 :無負荷損〔kW〕
      formula005formula005 :負荷損〔kW〕
 試験時の印加電圧 formula006formula006 〔V〕は、

formula007
formula007

 ここに、 formula008formula008 :変圧器の定格電圧〔V〕
      formula009formula009 :変圧器のインピーダンス電圧〔%〕

 すなわち、三相変圧器の場合、変圧器の二次側を三相短絡し、一次側から三相電圧 formula010formula010 〔V〕を印加して負荷試験を行う。試験用電源の皮相電力 formula011formula011 〔kVA〕は、

formula012
formula012

となるが、そのままでは力率が悪いため大きな容量の試験用変圧器が必要になる。そのため遅れ電流補償用コンデンサSCを設置し、力率を改善して所要容量を小さくするようにする。

(8) 騒音測定

 電気工作物が騒音規制法における特定施設に該当し指定地域内に設置された場合は、厚生省・農林省・通商産業省・運輸省告示第1号「特定工場等において発生する騒音の規制に関する基準」に基づき騒音が規制される。特定施設とは、電気工作物においては原動機の定格出力が7.5kW以上の空気圧縮機及び送風機等が施設された場合等が該当する。また、変圧器など連続的に発生する大きな騒音についても通常対象となる。第11表に、告示第1号に記載された規制値(抜粋)を示す。騒音は電気工作物の運転状態において、電気技術指針「発変電所等における騒音防止対策指針」(JEAG 5001-2005)に基づいて、電気工作物の敷地境界線における騒音値を測定し、規定どおりの騒音値以下であることを確認する。騒音の測定は、騒音計を使用し周波数補正回路は人間の聴感に比較的近いように合わせているA特性を使用する。測定位置は敷地境界の地表上1.2m、塀がある場合は塀上0.3mとされている。

(9) 振動測定

 電気工作物が振動規制法における特定施設に該当し、指定地域内に設置された場合は、環境庁告示第90号「特定工場等において発生する振動の規制に関する基準」に基づき振動が規制される。 特定施設とは、電気工作物においては原動機の定格出力が7.5kW以上の圧縮機が施設された場合等が該当する。第12表に告示第90号に記載された規制値(抜粋)を示す。振動は電気工作物の運転状態において、特定施設の敷地境界線における振動値を測定し規定どおりの振動値以下であることを確認する。振動の測定は振動レベル計を使用し、JIS Z 8735-1981(振動レベル測定方法)に基づいて敷地境界の地表面で実施する。

参考文献
  自家用電気工作物必携Ⅱ保安業務篇第8版 関東経済産業局資源エネルギー部監修