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基底温度に誘電体損による温度上昇と、導体損失と総合熱抵抗との積である温度上昇とを加えた温度が絶縁体の特性から定められた、導体の常時許容最高温度と等しくなるときの導体の電流が常時許容電流である。第1表にケーブル種類ごとの導体最高許容温度を示す。
また、導体損は次のとおりである。
ここで、 :心線数、 :導体の交流実効抵抗
交流実効電流は常時最高許容温度での交流抵抗で、表皮効果、近接効果により導体サイズが大きいほど増加率が大きくなる。このため大サイズ導体では分割絶縁、素線絶縁などの工夫がされている。
一般的なサイズの場合は直流抵抗の数%増程度である。
以上から常時許容電流は次式で算出する。
また、「地中ケーブルの許容電流(㈵)」第1表(注)に示したように夏、冬で基底温度が異なるため、管路式、直埋式の大容量地中ケーブルでは、一般に夏季、冬季の常時許容電流の制定値を変えている。
地中ケーブルの運用にあたって、並列回線の事故、受電系統の切り替えなどで0.5〜2時間程度、常時許容電流を超過して電流を流す必要が生ずる場合がある。また、絶縁物は短時間で、その程度が小さければ連続使用最高温度を超過しても、寿命に大きな影響を与えずに耐えることができる。
このため導体温度を常時許容温度より10〜15℃上げた短時間許容電流を電力系統運用上定めることがある。
負荷電流による短時間の温度上昇を考える場合、土壌の温度変化はないものとし、ケーブル部分だけの温度上昇と考える。
電流が急に増加した場合、ケーブルの温度上昇はケーブル部分の熱容量のため、飽和曲線を描いて時間とともに上昇する。この場合の時定数はケーブルの種類にかかわらずほぼ一定であり、その逆数β=0.6になることが実験的に知られている。
短時間許容電流によるケーブル部分の温度上昇は常時負荷電流による定常的なものと、過電流の損失増分による時間的に変化するものとの重ね合わせになる。第1図にこの関係を示す。
これから短時間許容電流はその継続時間によって大きく変わることが分かる。また、この値は過電流運転前のケーブル温度、すなわち平常時負荷電流によって変わるが、普通、安全をみて常時許容電流が流れていたものとしている。
以上から短時間許容電流は次式で算出される。
ここで、 :ケーブル部分の熱抵抗、 :短時間許容最高温度〔℃〕、
β:熱時定数の逆数、t:時間〔h〕、 :常時許容電流〔A〕、 :短時間最高許容温度における導体実効抵抗〔Ω〕
短時間許容電流の適用は、寿命に与える影響を避けるため、年間数回程度に制限することが多い。
電気設備では長年使用しているうちに短絡事故に遭遇する機会は避けられない。このため電気系統の要所要所に過電流保護装置が設置されている。
特に、電線、ケーブルではそれ自体に短絡が発生しなくても、負荷側の設備に短絡事故が発生すると全長にわたって短絡大電流が流れ、これに対する電流容量が不足していると、過熱により文字どおり瞬時にして全長すべて使用不能になることもある。
短絡電流に対する許容電流を瞬時許容電流という。
短絡電流の通電時間は保護装置の動作により、事故電流が遮断されるまで最長2秒程度と極めて短いので、導体内で発生した熱量はすべて導体内に蓄積されると考える。
ただし、OFケーブルでは導体内の絶縁油も導体同様に発生熱を蓄積するものとする。したがって、瞬時許容電流は絶縁体の瞬時許容温度と、導体の材質及びサイズによって決まる。
また、最大数万アンペアにもなる短絡電流を細かく算出することは実用上あまり意味がなく、その算出式として次の略算式が広く使用されている。
ここで、K:定数、AC:導体断面積〔cm2〕、tS:短絡電流持続時間〔s〕
第2表に定数Kの値を示す。
地中ケーブルの許容電流は架空線と比較して同一導体サイズでは格段に小さい。このため特に高電圧線路ではルート確保の困難もあって許容電流をいかに増大するかは重大である。このため種々の対策がとられている。
(a)ケーブル製造上の対策として次のものがある。
・分割絶縁導体や素線絶縁導体など導体損の軽減
・絶縁体の改良による誘電体損の改善
(b)布設運用面での対策では冷却による許容電流の増大が大きい。
冷却方式により異なるが、冷却により1.2〜2倍にすることができる。
ただし、冷却装置が故障したときは直ちにケーブル負荷電流を非冷却時の許容電流まで減らす必要があり、冷却装置の信頼度が線路の信頼度になる。