直流の場合と同様に、交流電圧を印加した場合、電圧印加直後にどのような電流が流れるかを調べてみましょう。
第1図の回路において、印加電圧をとすれば、回路の電圧方程式は、
(1)
(2)
で、C には初め電荷は無く、t =0の時スイッチSを閉じたとすれば、電荷q は(3)式となります。
(3)
ただし、Z は回路のインピーダンスで、、φ
は、電圧v と電流i の相差角で、 です。
したがって、求める電流iは、
(5)式の右辺第1項
(6)
は、実効値がV/Zで、位相が印加電圧よりφ だけ進む交流を表し、通常のRC直列回路に流れる電流であることがわかります。
一方、第2項の最初の項、
(7)
は、t=0の時、 (8)
で、この値を最大値として時間と共に次第に減少し遂には零となります。
第2項の次の項
(9)
は、t=0のときのiS の値iS (0)が(6)式から、
(10)
なので、これを使って次式のように表すことができます。
(11)
したがって、t =0の時の値が-iS (0)で、it1
と同様に、この値を最大として時間と共に次第に減少し遂には零となります。
したがって、以上の結果から、(5)式は次のように表すことができます。
(12)
[1]
初位相α≠0の場合の電流
iS が(6)式、iS (0)が(10)式で、t
=0のときの電流i(0)は、(12)式より
(13)
となるので、i のグラフは第2図となります。
以上のことからわかるように、電圧や電流の大きさや方向が時間に対して変動しない状態や、iS のように時間に対して常に一定の周期的変化をしている状態のことを定常状態といい、この状態で流れる電流を定常電流と云います。これに対して、it
のように時々刻々値が変化している状態のことを過渡状態といい、過渡状態に起きている現象を過渡現象と云います。そして、過渡状態に流れる電流のことを過渡電流と云います。
したがって、スイッチ投入と同時に定常電流と過渡電流とが流れ、時間が経過すると過渡電流が消え定常電流だけとなります。
[2]
α=0の場合、回路に流れる電流を調べてみましょう。
この場合、定常電流iSは、
(14)
であり、電流iは、(12)式において、この場合 v (0)=0 なので、
(15)
となります。
iS (0)は、(14)式から、
(16)
です。
t =0の時の電流i(0)は、(15)式より、 です。
これらの電流を図に示すと第3図となります。
[3]
のときは、電流iS は、(6)式より、
(17)
i (0)は、(13)式から、
(18)
となり、これらの電流のグラフは、第4図(a)となります。この場合、スイッチ投入時の回路電流は最も大きい値となります。
[4]
、すなわち、のときは、
(6)式から、 (19)
(20)
(21)
の関係にあるので、
(22)
となり、電流の式(12)式は、
(23)
となります。
つまり、(12)式で、 なので過渡電流は流れません。
したがって、このときは過渡現象は起きません。(第4図(b))
今回とりあげた事例のように、一般に電気回路では、印加電圧や回路定数が急変するとき、回路の接続を変更したとき、これらの直後には過渡現象が起こります。
交流回路の場合は、
㈰ 交流回路なのに直流の過渡電流が流れます。(第2、3図、第4図(a))
㈪ スイッチ開閉のタイミングによつて、いろいろな過渡電流の流れ方をします。
【考察】なぜ、このような過渡現象が起こるのか考えてみましょう。