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社団法人日本電気技術者協会 電気技術解説講座 文字サイズ変更ヘルプ
Presented by Electric Engineer's Association
交流瞬時値の三角関数表示式 東京電気技術高等専修学校講師  福田 務

三角関数はsincosなど英記号で表すので難しいと思っている人が意外に多いが、正弦波交流を取り扱う上で重要な関数である。ここでは、三角関数のグラフと交流の瞬時値の式を対比させ交流波形を描くこと、瞬時値の式から位相の進み遅れが分かることを目標に解説する。また、関連する電験の過去問題も例題として取り上げ、理解を深めよう。

1 角の大きさの表し方と弧度法

 角の大きさを表すのに、最もふつうに用いられるのは、直角の1/90を単位とする表し方である。この直角の1/90は1度と呼ばれ、記号1°で表される。この単位によれば、直角は90°、平角は180°、円周角は360°となる。

 しかし、電気では“度”よりもむしろ弧度法による単位を用いたほうが便利である。この方法は半径が1である円の周の長さがであることを利用して、円周角360°がで表されるように、単位の角を選ぶのである。

 この単位によれば、直角はπ/2で、平角はπで表される。円周角がとなるように選んだ角の単位をラジアンまたは弧度という。1ラジアンの角度とは半径1の円において、それを中心角とする円弧の長さがちょうど1に等しくなるような角である(第1図)。

formula001
formula001

2 単位円について

 原点Oを中心とする半径1の円を単位円という。第2図x軸のxの正の部分を始線とする角θの動径と単位円Pとの交点Pの座標(xy)について考えてみる。OP=1であるから、三角関数の定義から、

  OQ/OP =cosθ → x=cosθ  PQ/OP=sinθ → y=sinθ

 ここで単位円上の点(xyについて三平方の定理からx2y2=1

 したがって、sin2θ+cos2θ=1となることが分かる。

3 三角関数のグラフについて

(1)y=sinθのグラフ

 第2図を見てください。Pのy座標がsinθの値になることが分かるはずである。したがって、横軸にθの値をとり、縦軸に各θに対するsinθの値を目盛ってグラフを書くと第3図のようになる。書き方は例えば、右のθ軸上θ=π/6で、θ軸に立てた垂線と、θ=π/6に対する動径と単位円との交点Pからθ軸に引いた平行線との交点をつくる。また、ほかの角度、θ=π/3π/22π/35π/6π、…と順々に同様にして交点をつくり、この交点を結ぶと①、②、③、④のy=sinθのグラフが第3図のようになることが分かる。

 これを正弦曲線(サインカーブ)と呼んでいる。また、sinθの値は〔rad〕ごとに同じ変化を繰り返す。

(2)y=cosθのグラフ

 次にy=cosθのグラフを書いてみる。既に第2図で述べたように、角θの動径と単位円との交点をPとすると、Pのy座標がsinθであり、x座標がcosθに等しいことを学んだ。このことから動径Pのx座標の大きさに注目しながら

 y=cosθのグラフを書くと、第4図のようになる。y=cosθのグラフは余弦曲線またはコサインカーブと呼ばれる。

 しかし、グラフから分かるように cosθ=sin(θ+π/2)であるから、y=cosθのグラフは、y=sinθのグラフをθの方向に-π/2だけ(負の方向にπ/2だけ)平行移動したものである。すなわち、余弦曲線は位置がずれているだけで、形状的には正弦曲線と全く変わりない(第5図)。

4  交流の表し方と三角関数

 第6図の交流を瞬時値で表現すると、電圧e=Emsinωt〔V〕であるが、Em:最大値であり、実効値をEとすれば formula002 formula002 〔V〕、またωは角速度〔rad/s〕でω=2πfθ=ωtである。この交流は時間T〔s〕ごとに同じ変化を繰り返しており、このT〔s〕を周期と呼び、次の関係が成立する。

     T=1/f〔s〕

5  位相の進み遅れ

 三角関数のグラフが二つあった場合、位相の進み遅れの判断が必要となる。このときの判断の基準は交流の波形から行う場合と、瞬時値の式から行う場合がある。いま第7図のように(5・1)式および(5・2)式に示される周波数の等しい二つの波形に時間的なずれ、すなわち位相差があるとき、位相の進み遅れの判断はどうすればよいであろうか。

      e1=Emsinωt〔V〕        (5・1)

      e2=Emsin(ωtθ)〔V〕     (5・2)

 この二つの交流e1e2 t=0のときの位相がそれぞれ0、θであるから、e1e2よりもθだけ位相が進んでいる、あるいはe2e1よりもθだけ位相が遅れていると表現する。また、位相のずれがないときは同相であるという。

 e1の位相がe2に対してどれだけ進んでいるか、また遅れているかの判断はe1の位相角からe2の位相角を引けばよい。

 (e1の位相角)-(e2の位相角)の値が正の場合は、e1e2より位相が進んでいることになるし、負ならばe1e2より位相が遅れていることになる。

(例題1)e=100sin(ωt+π/6)〔V〕及びi=10sin(ωt-π/3)〔A〕の波形のグラフを描き、eiとの位相差を求めよ。

〔解答〕 e=100sin(ωt+π/6)において、

   ωt=0ではe=100sinπ/6=100×1/2=50V

   ωt=-π/6ではe=100sin0=0

となるから、eの波形のグラフは第7図のようになる。

 また、i=10sin(ωt-π/3)で、

   ωt=0では formula003 formula003

   ωt=π/3ではi=10sin0=0

となるからiの波形のグラフは第8図のようになる。

 eの位相角はθ1=π/6iの位相角はθ2=-π/3であるから、位相差はθ1θ2=π/6-(-π/3)=π/2〔rad〕となる。

(例題2)図の回路において、右のような正弦波交流電圧v〔V〕を抵抗R=10Ωに加えたとき、流れる電流の瞬時値i〔A〕を表す式として正しいのは次のうちどれか。ただし、電源の周波数を50Hzとする。

 (1)10sin(50π t-π/6)    (2)10sin(50π t+π/6)

 (3)10sin100π t        (4) formula004 formula004

 (5) formula005 formula005

 〔解答〕与えられた電圧波形の瞬時値の式は、

formula006  〔V〕
formula006   〔V〕

 である。ただし、ωt=2πf=100π t

  瞬時値iは抵抗負荷Rであるから、電圧vと同相で次のように表される。

formula007 〔A〕
formula007 〔A〕

 〔答〕(5)

 

(例題3) formula008 formula008 〔V〕と formula009 formula009 〔A〕で表される電圧と電流の位相差を時間で表すと、正しいのは次のうちどれか

 (1)1/50     (2)1/100     (3)1/100π     (4)1/240     (5)1/1,200

 〔解答〕

 Esinで表せば、位相をπ/2進める必要があるので、位相差θは、

formula010
formula010

 この位相差を時間で表すには、ωt=θを満足するtを求めればよい。

 ω=100πであるから、

formula011
formula011

 〔答〕(5)

(例題4)ある回路に、 formula012 formula012 〔A〕の電流が流れている。この電流の瞬時値が、時刻t=0〔s〕以降に初めて4〔A〕となるのは、時刻t=t1〔s〕である。t1の値として正しいのは、次のうちどれか。

 (1)1/480 (2)1/360 (3)1/240 (4)1/160 (5)1/120

 〔解答〕時刻t1での瞬時値i=4〔A〕を電流の式に代入すると、

formula013
formula013

      変形すると  formula014 formula014

      sinの値が formula015 formula015 になるときは、角度がπ/4〔rad〕のときなので、

      π /4=120π t1

formula016
formula016

 〔答〕(1)