~終わり~
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1.電気設備技術基準のルーツは明治44(1911)年3月に電気事業法の制定とともに制定された電気工事規程である。大正8(1919)年には電気工事規程が電気工作物規程に変わり、その後の改正が行われ、昭和29(1954)年に通産省令として公布され、内容的には現在の解釈体系となった。
2.旧電気設備技術基準 昭和39年に新しい電気事業法が制定され、昭和40年6月に制定された。電気工作物規程の内容を受け継ぐとともに、電気工作物の維持基準としての性格が明確にされた。
3.現電気設備技術基準とその解釈 平成9年、技術基準の性能規定化が行われた。その結果、旧電気設備技術基準が審査基準として取り入れられた。
電気設備技術基準は通商産業省令第52号(平成9年3月2日)として公布されており、その前文に次のように示されている。
電気事業法〔昭和39年法律第170号〕第39条第1項及び第56条第1項の規定に基づき、電気設備に関する技術基準を定める省令〔昭和40年を通商産業省令第61号〕を次のように定める。
電気事業法第39条は電気事業用と自家用の電気工作物である事業用電気工作物に対しての根拠条文である。
電気事業法第39条
第1項 事業用電気工作物を設置する者は、事業用電気工作物を経済産業省令で定める技術基準に適合するように維持しなければならない。
第2項 前項の経済産業省令は、次に掲げるところによらなければならない。
電気事業法第56条は一般用電気工作物に対しての根拠条文である。
電気事業法第56条
第1項 経済産業大臣は、一般用電気工作物が経済産業省令で定める技術基準に適合していないと認めるときは、その所有者又は占有者に対し、その技術基準に適合するように一般用電気工作物を修理し、改造し若しくは移転し、若しくはその使用を一時停止すべきことを命じ、又はその使用を制限することができる。
第2項 第39条第2項〔第3号及び第4号を除く。〕は、前項の経済産業省令に準用する。
技術基準の種類は電気工作物に関するものは次の5種類がある。このほか電気工作物に関するものではないが、発電用核燃料物質に関する技術基準がある。当初溶接に関する技術基準も別に規定されていたが、現在では火力と原子力の基準に含まれている。
・電気設備に関する技術基準を定める省令
・発電用水力設備に関する技術基準を定める省令
・発電用火力設備に関する技術基準を定める省令
・発電用風力設備に関する技術基準を定める省令
・発電用原子力設備に関する技術基準を定める省令
これら五つの電気工作物において規制できる事項が、電気事業法第39条と第56条の第2項に規定されている。一般用電気工作物に対するものは第56条で、第39条の①と②に該当する事項だけ規定できるとしている。
法第39条第2項(事業用電気工作物に対して)
① 人に危害を及ぼし、又は物件に損傷を与えないようにすること。
② 他の電気的設備その他の物件の機能に電気的又は磁気的な障害を与えないようにすること。
③ 事業用電気工作物の損壊により一般電気事業者の電気の供給に著しい支障を及ぼさないようにすること。
④ 事業用電気工作物が一般電気事業の用に供される場合にあっては、その事業用電気工作物の損壊により一般電気事業に係る電気の供給に著しい支障を生じないようにすること。
第1章 総則
第1節 定義 (第1条・第2条)
第2節 適用除外(第3条)
第3節 保安原則
第1款 感電、火災等の防止(第4条~第11条)
第2款 異常の予防及び保護対策(第12条~第15条)
第3款 電気的、磁気的障害の防止(第16条・第17条)
第4款 供給支障の防止(第18条)
第4節 公害等の防止(第19条)
第2章 電気の供給のための電気設備の施設
第1節 感電、火災等の防止(第20条~第27条の2)
第2節 他の電線、他の工作物等への危険の防止(第28条~第31条)
第3節 支持物の倒壊による危険の防止(第32条)
第4節 高圧ガス等による危険の防止(第33条~第35条)
第5節 危険な施設の禁止(第36条~第41条)
第6節 電気的、磁気的障害の防止(第42条・第43条)
第7節 供給支障の防止(第44条~第51条)
第8節 電気鉄道に電気を供給するための電気設備の施設(第52条~第55条)
第3章 電気使用場所の施設
第1節 感電,火災等の防止(第56条~第61条)
第2節 他の配線,他の工作物等への危険の防止(第62条)
第3節 異常時の保護対策(第63条~第66条)
第4節 電気的,磁気的障害の防止(第67条)
第5節 特殊場所における施設制限(第68条~第73条)
第6節 特殊機器の施設(第74条~第78条)
1 電気工作物自体が損傷しないこと。
2 電気工作物が損傷しても人や他の工作物に障害を与えないこと。
3 事故による影響をできるだけ狭い範囲にとどめること。
4 公害防止、電磁気障害など
1 電気工作物自体が損傷しないこと 〔条文は電技省令の番号〕
① 異常電圧による損傷防止
第5条「電路の絶縁」
第12条「特別高圧電路等と結合する変圧器の火災の防止」
第49条「高圧及び特別高圧の電路の避雷器等の施設」
② 短絡電流による損傷防止
第45条「発電機等の機械的強度」
③ 通常電流による熱的損傷防止
第8条「電気機械器具の熱的強度」
④ 風力、重力等による損傷防止
第6条「電線等の断線の防止」
第7条「電線の接続」
第32条「支持物の倒壊の防止」
第47条「地中電線路の保護」
2 電気工作物が損傷しても人や他の工作物に障害を与えないこと
① 離隔距離
第9条第2項「高圧又は特別高圧電気機械器具の危険の防止」
第25条「架空電線等の高さ」
第29条「電線による他の工作物等への危険の防止」
第30条「地中電線等による他の電線及び工作物への危険の防止」
第62条「配線による他の配線等又は工作物への危険の防止」
② 電路と対地間との絶縁
第5条「電路の絶縁」
第58条「低圧の電路の絶縁性能」
③ 感電防止措置
第9条「高圧又は特別高圧電気機械器具の危険の防止」
第15条「地絡に対する保護対策」
第21条「架空電線及び地中電線の感電の防止」
第57条「配線の使用電線」
第59条「電気使用場所に施設する電気機械器具の感電、火災等の防止」
電技では電圧を第2条において低圧、高圧及び特別高圧に区分しているが、この区分以外に電気工作物の使用電圧によって詳細にその施設方法を規定している。
電圧の区分(電技第2条)
電圧の区分 | 交 流 | 直 流 |
---|---|---|
低 圧 | 600V以下 | 750V以下 |
高 圧 | 600V超過 | 750V超過 |
特別高圧 | 7,000V超過 | 7,000V超過 |
1 低 圧
1.交流低圧(600V以下)
(1) 電圧30V以下
電気事業法の電気工作物の定義において電圧30V以上の電気的設備と電気的に接続されていない「電圧30V未満の電気的設備」は電気工作物の定義から除かれている。要するに電圧30V未満は、危険の少ない電圧として電気事業法による規制はかからないことになっている(電気事業法施行令第1条)。
(2) 電圧60V
電圧60V以下の小勢力回路の該当するものは、使用する電線、施設方法等について、低圧配線によらないことができる(電技解釈第181条)。
(3) 対地電圧150V
・白熱電灯、放電灯に電気を供給する電路の対地電圧は、原則150V以下(電技解釈第143条第3項、第185条第1項)。
・住宅の屋内電路の対地電圧は、原則150V以下(電技解釈第143条第1項)。
・対地電圧150Vを超える白熱電灯、家庭用電気器具は充電部の露出禁止(電技解釈第167条第1項)。
・機器の金属製外箱の接地を省略できる場合は、交流対地電圧150V以下(直流の場合は300V以下)(電技解釈第29条第2項第1号)。
(4) 電圧300V
交流電圧300Vは、以前の低圧の限度でもあり、屋内配線の施設方法及び架空電線路の施設においても300Vを境に多くの差が設けられている。
[接地と屋内配線工事関係]
低圧機器や低圧配線の金属製部分等の接地工事は、300V以下はD種、300Vを超える場合はC種(電技解釈第29条、第159条、第162条、第163条、第164条)。
低圧屋内配線において300Vを超える場合は、合成樹脂線ぴ工事、金属線ぴ工事、ライティングダクト工事、平形保護層工事は認められていない(電技解釈第156条第1項)。
・300Vを超える電路には中性点を接地する(電技解釈第19条、第24条)。
・300Vを超える低圧屋内電路には引込口開閉器の施設が必要(電技解釈第147条)。
・300V以下の低圧2線式屋内電路の開閉器は、屋内幹線との分岐点又は接触電線に電気を供給する電路に施設するものを除き、単極に施設することができる(電技解釈第148条第2項)。
・低圧のがいし引き工事において300Vを区切りに、電線と造営材の離隔電線の支持点間隔などにおいて差がある(電技解釈第157条)。
2 高 圧
600Vから7,000Vの高圧区分においては電線やケーブルなど製品の規格に差があるだけで、施設における本質的な差は設けられていない。
① 高圧ケーブルの耐圧試験電圧
(3.5kV以下9,000V、3.5kVを超えるもの17,000V)(電技解釈第10条)
② 高圧キャブタイヤケーブルの耐圧試験電圧(1.5kV以下5,500V、3.5kV以下9,000V)
③ 引下げ線用高圧絶縁電線の絶縁体の厚さポリエチレンの場合、3.5kV以下2mm、3.5kV超え3mm(電技解釈第5条第3項)
3 特別高圧
7,000Vを超える特別高圧においては主として電線路関係において35kV、60kV、160kV、170kVの電圧区分によって施設の差がある。特に35kV以下の場合は、配電線として使用される実態を考慮して高圧配電線と同じような施設ができるようになっている。
① 特別高圧用の機器のさくの高さと、さくからの充電部までの距離。
35kV以下5m、35kVを超え160kV以下6m、160kVを超えたものは6mに160kVを超える10kV又はその端数ごとに12cmを加算(電技解釈第31条第1項2号、電技解釈第38条第1項)。
② 特別高圧配電塔の施設は1次電圧35kV以下(電技解釈第26条)。
③ 特別高圧から直接低圧に変成する変圧器の1次電圧は35kV以下(電技解釈第27条)。
④ アークを生ずる開閉器等と木製の壁などの離隔は、35kVを超える場合は2m、35kV以下は1m(電技解釈第23条)。
⑤ 特別高圧架空引込線の高さは、35kV以下の場合は地上高4m以上(電技解釈第118条)。
⑥ 特別高圧電線路の地表上の高さは35kV以下、160kV以下、160kV超過を境として規定されている(電技解釈第87条第1項)。
使用電圧の区分 | 地表上の高さ |
---|---|
35,000V以下 | 5m(鉄道又は軌道を横断する場合は5.5m、道路を横断する場合は6m、横断歩道橋の上に施設する場合であって電線が特別高圧絶縁電線又はケーブルであるときは4m) |
35,000Vを超え 60,000V以下 |
6m(山地等であって人が容易に立ち入らない場所に施設する場合は5m、横断歩道橋の上に施設する場合であって電線がケーブルであるときは5m) |
160,000Vを 超えるもの |
6m(山地等であって人が容易に立ち入らない場所に施設する場合は5m)に160,000Vを超える10,000V又はその端数ごとに12cmを加えた値 |