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通常の状態では木材は電気を通さないが、約3,000℃以上の高温で炭化すると電気を通すようになることがある。
これは木材が火災熱によって炭化した場合は、不良導体の無定形炭素(木炭)になるが、電気的スパークによって生じた炭素は同素体の黒鉛(グラファイト化)となり、導体となるためである。
ここではグラファイト化現象を含めて炭化導電路の形成を広義の「トラッキング現象」と呼ぶ。
第1図に実験によるトラッキング火災に至るまでのメカニズムを示す。
東京消防庁管内で平成24~26年に発生したトラッキング火災は33~86件/年発生しており、中でもプラグ部分の火災が大半を占めている。
第2図にトラッキング火災の状況を示す。
① プラグ両刃の付け根部分に両刃とも溶融痕が存在しているか溶断している。
② 直接燃焼したプラグは絶縁距離(沿面距離)の最も近いところから短絡が発生する。
③ 水+ほこりによっても絶縁不良から短絡が発生し、燃焼することから、微量の導電性物質の存在でも長時間かけるとトラッキング火災に至る。
④ トラッキングによって燃焼してプラグの両刃が溶融または溶断しても、配線用遮断器(20A)は作動しない。
(a)プラグ
異極間相互の絶縁物に耐トラッキング性能を有するユリア樹脂を使用する。または異極間の沿面距離を長くするなどの対策を講じたプラグを採用する(第3図)。
(b)プリント基板
プリント基板上の電位差がある部分に水分が付着しないようにシリコン樹脂などによって充電部を防護する。または配線板を垂直にすることによって水分が基板に付着しにくくする。
(c)その他
水分や湿気を含んだほこりなどが付着して絶縁が劣化しないように清掃を行うことが最も簡単な方法である。
最近ではトラッキング発生時の温度を感知して、電気の供給を停止する安全装置やトラッキング発生時の波形をマイコン制御によって検出する配線用遮断器も開発されている(第4図)。