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LED(Light Emitting Diode)は、発光ダイオードとも呼ばれている。最近、白色LEDの高効率化と高出力化が急速に進んだことで、既存の白熱電球や蛍光灯に代わる高効率の光源として期待されている。
電子工学により真空管が半導体素子に代わったと同じように、照明用光源も真空管に相当する蛍光ランプや電球からLEDという半導体素子に代わる可能性もある。
LEDは、順方向に電圧を加えた時に発光する半導体素子で、整流用に使われているダイオードと同様にP型とN型の半導体を接合したものである。P型半導体はプラスの電荷をもつ「正孔(ホール)」が多く、N型半導体はマイナスの電荷を持つ「電子」が多い半導体である。図1.に「正孔と電子の再結合と発光」の様子を示す。
図のように順方向に電圧をかけると、正孔と電子は各半導体領域をPN接合部に向かって移動する。両者は接合領域でぶつかり合い結合(この現象を再結合という)して、より小さなエネルギー状態になる。この時に余分なエネルギーが光に変換されて発光する。
LEDの半導体は整流用ダイオードなどのSi単体ではなく、輝度や発光色に応じたAl,As,Ga,Inなど化合物(化合物半導体)である。また、PN接合部は電子や正孔などのキャリァが集中して効率良く再結合できるような構造、「ダブルへテロ接合」や「電子井戸接合」という特殊な構造、が利用される。ここで、ヘテロとは「異種」と言う意味である。
照明用光源は白色光が条件である。しかし、白色光は単色光ではなく、赤(R),緑(G),青(B)の三原色によって実現される色である。蛍光灯ではこれらの単色光をバランス良く組み合わせて白色光を作っている。その他に、補色となる2つの色を組み合わせる方法がある。これらより、LEDで白色発光を得る方法として次ぎの方法が考えられる。
1)光の3原色LED(赤,緑,青の3色)を組み合せる。
赤,緑,青の3色のLED発光素子を一つのパッケージに収めて、その混色で白色光をえる。
放射エネルギーの無い波長域が3色の間に存在する為に、物の見え方が不自然になる。また、各光源の色バラツキの調整・制御が難しい。その為に物体を照明した時の色再現性(演色性)に不都合が生ずる可能性があり、照明用には適していない。光を直接見せるディスプレイや大型映像装置の用途に使用されている。
2)近紫外線または紫色LEDにより、赤色・緑色・青色・の蛍光体を光らせる。
3波長蛍光ランプと同じ発光方式である。青色よりも波長の短い紫外放射線をLED光源で発生させて、それで可視発光の蛍光体(例えば赤,緑,青の3色)を励起発光させる。
きれいな白色が得られ色再現性も良いが、現段階では、効率、耐久性のよい蛍光体が得難いなど、課題が残っている。しかし、将来の照明用LEDの主流になるといわれている。
3)青色LEDにより、黄色発光体を光らせる。
3方式の中で一番発光効率が高い。青色発光を用いて、その一部で黄色発光体を励起発光させて、青色光と黄色光の補色となる2つの混色で白色光を作り出す。
現在広く使用されている方式である。LEDチップは、InGaN(Indium Gallium Nitride)で、発光体はYAG(Yttrium Aluminum Garnet)である。しかし、赤色や青緑色成分が不足気味で色再現性が不充分なこと、青発光(LEDの固有の発光)と蛍光体の発光の配光が同じでないため配光の色むらが生じ易いなどの問題点もある。
不足がちな赤色や青緑色成分を補った改良型も近年開発されている。
(1)砲弾型LED
リードフレームと一体化形成したカップ内にLEDチップを実装し、カップ内に蛍光体を分散させた樹脂を封入して、砲弾型にエポキシ樹脂でモールドした構造である。エポキシ樹脂は、チップの保護と共に、レンズを形成し光の方向性を高めている。
携帯電話のバックライト照明に多く用いられている。
(2)表面実装型(Surface Mount Device)
セラミックや樹脂などで成形したキャビティの中にLEDチップを実装したチップ型LEDで、チップマウンターにより基板上に高密度実装を可能にしている。
キャビティ内側面は反射板の機能を持たせて多くの光を取出せる構造とし、蛍光体を分散させたエポキシやシリコーンなどで樹脂を封入してある。
(3)チップオンボード(Chip On Board)
多数のLEDチップを基板に直接実装した構造である。類似の構造の「ハイパワー型」は、ヒートシンクの金属板付き配線基板に直接LEDを実装し大電流による発熱に対応している。代表的なものとして電球型LEDランプがある。
LEDの電圧・電流特性の例を図8に示す。一般的なシリコンダイオードと電気的に類似した特性をもち、ある電圧以上では電流が急激に増加する。この電圧を順方向電圧(Vf)という。
順方向電圧(Vf)は発光色によって異なり、高目の値で赤色・橙色・黄色・緑色では2.1V程度、白色・青色では3.5V程度である。また、周囲温度により、製造の微妙な差により素子毎にその値にバラツキがある。
順方向電圧は素子毎にバラツキがあり、その値以上の電圧では電流が急激に増加するので、安定動作のためには電流の制限装置(安定器)が必要である。直流点灯では抵抗器を用いる案もあるが、照明用としては低電力化の点で難があり、定電流回路が採用される。商用電源による照明用点灯回路としては、スイッチング電源タイプ(AC→整流→平滑→スイッチング回路→整流→平滑定電流化)の回路構成が主流になると思われる。
図9.に回路構成の例を示す。
LEDに流す電流をスイッチング素子のON/OFFのデューティ比で調整する。この電流を一定にするため、LEDの電流値をパルス幅制御ICへの制御信号としてフィードバックしている。
LED照明の基本事項を説明した。更に、当技術解説「LEDの特徴」では、LED照明の現状と課題をより具体的に解説する。合わせて参考にして欲しい。
1.「LED素子の照明への応用と課題」松下電器株式会社 照明R&Dセンター 杉本 勝 BE建築設備2008年1月号
2.「LEDの基礎知識」東芝ライテック株式会社 ホームページ
3.「LEDの発光原理」パナソニック ホームページ
4.「LED照明の省エネ点灯電源と調光制御技術」東芝レビューVol.65 No7.(2010)