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社団法人日本電気技術者協会 電気技術解説講座 文字サイズ変更ヘルプ
Presented by Electric Engineer's Association
電圧フリッカとその対策について 松田 高幸

電圧フリッカに関して、実務面で良く判らないことがあります。 電圧フリッカに関連する、 ① 電圧フリッカ負荷の種類、② 電圧フリッカの影響、 ③ 電圧フリッカの大きさ(尺度)、④ 具体的な対応策、⑤ 実用上の留意事項等について、簡潔に説明いたします。

電圧フリッカとその対策について、簡潔に言い表すと 

  • アーク炉負荷のような変動負荷がある場合、電圧変動が発生し、照明のちら つき等の影響が発生する。このような現象を電圧フリッカと称している。
  • ちらつきの尺度はΔV10で表される。
  • この値が0.45を越えると半数の人がちらつきを感ずるので、負荷変動の発生元が必要な対策を行う。

の通り明快ですが、実際には具体検討において「理論的な理解が必要なこと」や「過去からの経緯等の個別事情があること」など複雑になる場合があります。
 ここでは、以上に留意しつつ、極力シンプルに回答します。

電圧フリッカ負荷の種類

電圧フリッカの発生源となる負荷の種類は、以下の通りです。

  • アーク炉負荷    :数サイクル~数秒間の負荷変動(第1図 アーク炉)
  • 製鉄用の圧延設備  :数秒~数分の負荷変動
  • 交流式電気鉄道   :数分~10数分の負荷変動
  • 溶接機負荷     :1秒間に10回程度の負荷変動

 上記の内、ちらつき等の面で最も影響があるのはアーク炉負荷です(10ヘルツ程度の変動が最もちらつきを感じやすい)。溶接機負荷も(10ヘルツ程度の変動なので)影響が出やすいが、容量の面から問題になるケースは少ないようです。

 


電圧フリッカの影響

電圧フリッカの影響は以下の通り。  

  • 電圧変動に起因する照明のちらつき、テレビ画面の動揺、等
  • 生産面での「電動機の回転ムラ」、「工場製品の品質低下」、等
  • その他、不平衡電圧、逆相電流、高調波電流等による影響等

 上記のように、影響としてはいろいろありますが、「アーク炉負荷による照明のちらつき」の問題が実務面では最も多いようです。
 製鉄用圧延設備では、アーク炉に比較すると、負荷電流アンバランスは小さく、フリッカ面では影響が少ないが、継続時間が長い特徴があります。
 交流式電気鉄道では、フリッカより不平衡、逆相電流、高調波等が多くなります。


電圧フリッカの大きさ(尺度)

 電圧フリッカの尺度は、ΔV10を用いている。骨子は以下の通りです。

  • ΔV10の意味合い:フリッカをちらつき感の大きさで表したもの
  • ΔV10の測定単位:1分値としている
    (1時間値は、測定データ60個の95%に相当する4番目を使用している)
  • ΔV10の式(第2図 ちらつきの視感度曲線)
      ΔV10    (1)
    上式において、は視感度係数
     (例えば、10ヘルツでは係数=1、3ヘルツでは係数=0.563、等)
  • ΔV10の許容目標値:ΔV10=0.45以下
    (意味合い:0.45になると、半数の人がちらつきを感ずるので、この値を許容目標値や対策要否の判断に用いています)

具体的な対応策

  • 電圧変動(ΔV) ΔV    (2)
  • 対策方法
    対策としては、(2)式のΔVを小さくするため、以下のような方法が考えらます。
    • 影響を受ける負荷を遠ざける:専用線で供給する(抜本的な対策ではない)
    • ΔV10を小さくする:に関するもの(電圧階級をあげる)、に関するもの(短絡容量を大きくする)、ΔQに関するもの(サイリスタ制御等によりΔQを小さくする)、などが考えられます。
    • 上記の対策の中では、ΔQを小さくする方法が一般的です。具体的には、サイリスタ制御方式(TCR方式)が多く採用されています

実務面での留意事項

 発生から対策までの筋道はわかりやすいのですが、実際には留意すべきことが沢山あります。

  • 発生個所が複数になったとき、扱いが難しいケースがあります。
  • 実際には、過去からの経緯があり、個別検討になるケースがあります。
  • 一通り理解する(教科書の内容)には、理論面でも難しい内容のものあります。
    (電力系統との関係、フリッカメータ、対策装置、対策の評価、等)
  • 実運用、具体的な対策推進には、系統的な実測が有効な場合があります。
  • 系統と発生負荷の大きさから、簡単な試算を行うことがあります。
    (このような場合も、最終的には実測が大事になる)

参考(理論面)

 ⑥-1 アーク炉の電力円線図について(第3図 回路図、第4図 電力円線図)

        (3)          (4)  
           (5)          (6)  
             (7)        (8)
 ・(5),(6)式は(3),(4)式から、(8)式は、(6),(7)式から求めている。
 ・(8)式から、電力円線図は(9)式となる(なので、)。
        (9)  
⑥-2 Δmax(最大無効電力変動)、Δmax(最大電圧変動)、Δ10の概数
 Δmax(最大無効電力変動)=電極短絡無効電力-平常運転時無効電力(MVA)
       (10)
 ・この場合、は、=10MVAベースのパーセント値になる。
 ・がPU値の場合は、100/X0でなく、1/X0になる。
   Δmax(最大電圧変動)    (11)
 ・PSは、短絡容量(MVA)を表す(PS=100×PN/XSとしても表現できる)。
 ・この場合も、XSは10MVAベースのパーセント値。またPN=10MVA。
   Δ10の概数      (12)
 ・3.6の係数は経験値(実測に基づくもの)で、概数の把握に便利である。
 ・上記のように、Δ10まで想定できるが、詳細は実測等が必要になる。