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社団法人日本電気技術者協会 電気技術解説講座 文字サイズ変更ヘルプ
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電線の太さは何によって決めるか 片岡技術士事務所 代表 片岡 喜久雄

電線の太さは負荷電流によって決定しているように思っている向きもあるが、実際には負荷電流のほかにも、いろいろな条件によって決められている。ここではその代表的なものを紹介する。
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01.屋内配線など

 絶縁電線を使用する屋内配線などは絶縁物の耐熱特性から、電線の種類によって同じ電線サイズでも許容電流の大きさは異なり、耐熱温度が60℃の塩化ビニル絶縁電線と比較して架橋ポリエチレン絶縁電線は90℃と耐熱性が良く、電線サイズを細くできる。
 また、電線管内や受棚上に多条の電線を密着して配線すると放熱が悪く、温度が上昇する。
 例えば、金属管、金属ダクト、プラスチック管などに電線を引き込む場合、3条以下では22m㎡でよい許容電流を得るのに7~15条を引き込む場合には38m㎡ぐらいが必要になる。
 低圧の構内配線などでこう長が長い場合には電圧降下から電線サイズが決まることもある。


02.架空配電線など

 架空電線は屋外の厳しい自然条件にさらされるため、断線事故の防止が最も重要で、まず架線の耐張強度から電線サイズが決められる。
 電気設備技術基準の解釈にはケーブルを使用する場合を除いて、300V以下の低圧では引張り強さ3.44kN以上のもの、または直径3.2mm以上の硬銅線(絶縁電線では2.6mm)、300Vを超える低圧電線または高圧架空電線で、市街地に施設するものは引張り強さ8.01kN以上のもの、または直径5mm以上の硬銅線(市街地外では5.26kN以上のもの、または4mm以上の硬銅線)の仕様が定められている。
 電線の温度による制限はもちろんあるが、電線の間隔が空中で離れているため、相互間の熱的な干渉はなく、電線の種類(材質など)と太さによって許容電流は定まる。


03.地中電線路

 地中埋設電力ケーブルでは、同一の許容電流に対して必要な導体サイズが大幅に異なることが他の電線にない特徴であり、同一許容電流に対して導体の太さが2倍以上になることも珍しくはない。
 これはケーブルの定格電圧によって絶縁厚さが異なり、またケーブルの種類によって絶縁物の種類やケーブルの構造が異なるなどのためである。
 特に地中埋設電力ケーブルでは埋設されている土壌の熱的な特性が大きく影響し、全く同様の布設方式、布設寸法でも所要ケーブル導体のサイズが大幅に変わってくる。地中埋設電力ケーブルの許容電流算出の概念を第1図に示す。


 電力ケーブルの発生熱はケーブル断面の半径方向だけに放散し、導体~絶縁層~しゃへい・防食層を貫通し、土壌を通ってケーブルの存在に影響されない遠方の基準温度点に達する。
 この間にケーブル内部で誘電体損失、シース回路損が、ケーブル外部で他のケーブルの損失が導体損失に加わる。基準温度と各部の温度上昇の合計が絶縁物の許容温度になるような導体電流が電力ケーブルの許容電流である。
 特に土壌は固有熱抵抗が50~100℃/W/cmと土質によって変化するため許容電流に与える影響は大きい。
 また、電力ケーブルでは布設条数の影響も大きく受ける。



04.瞬時許容電流

 電線は種類、布設方式にかかわらず、それ自体が短絡しなくとも電線の負荷側で短絡が発生した場合には全長にわたって短絡電流が通過する。
 短絡電流は負荷電流に比べてはるかに大きいので、その継続時間中の加熱により、絶縁強度や引張り強さがこれに耐えず使用条件以下に低下すると、文字どおり瞬時にして全長が使用不能になってしまう。
 短絡電流の継続時間は普通1秒以下と短いので発生熱量は外部に放散せず、導体内(OFケーブルでは導体部内の絶縁油を含む)にすべて蓄積するものとする。したがって、電線導体の材質と太さによって瞬時許容電流は決まる。
 このため、負荷電流からは22m㎡で十分な場合も瞬時許容電流から100m㎡を必要とすることもある。
 更に既設電力ケーブルなどで系統の短絡容量が増大し、瞬時許容電流が不足した場合で引き換えが困難なときには短絡保護継電器の整定変更も考慮しなければならない。
 瞬時許容電流については電気技術解説講座№4203「電線・ケーブルの瞬時許容電流」も参照されたい。


05.超高圧架空電線

 超高圧架空電線では電線表面の電界の強さが大きく、これが空気の絶縁耐力を超えると電線表面にコロナ放電が発生する。コロナ放電は電波障害を起こすほか、損失も発生するので、これを防止するため、超高圧架空電線では負荷電流とは関係なくコロナ放電が発生しにくい電線の太さを必要とする。
 しかし、電圧が高くなればなるほどその太さを太くする必要が生じ、単導体では電界緩和のための太さの確保が不可能になるため、複導体が採用されている。

 第2図に単導体と4導体の電界の概念を示す。
 1,000kV送電線では1相の導体を6条または8条とする。