瞬時電圧低下による影響は、当初はモータのマグネットスイッチや大型モータのメカニカル型制御装置に関するものが多かったが(1970年代当初)、その後、私鉄沿線の銀行窓口(キャッシュ化)が全て停止する(1970年代中頃)等、影響を受ける機器の種類とその地域的な範囲が増大してきました。
電力会社では、どんなに早く故障除去を行っても(瞬時電圧低下時間が短くとも)、お客さま側の多くの機器が影響を受けるので、メカニズムや対策方法を折り込んだパンフレット等を作成し(1970年代後半)、必要な対策をお願いしてきています。
全国大でも影響があったことから1980年代の中頃、国レベルの検討(電気共同研究会による検討等)が進められ、その後若干の改善・追加を加えながら現在に至っています。
確かに、最近、新しい瞬時電圧低下対策に関する記事・説明を目にしますので、上記の質問に沿って回答します。
- 第1図に示すように、お客さまBへの送電線に故障が発生した場合を考えると、お客さまBは停電になるが、お客さまAは故障が発生してから故障を除去するまでの極めて短時間(275kVや500kVの系統でみると多くは0.07秒程度、稀に0.2秒程度)だけ電圧が低下することになる。
- この故障発生から故障除去までの電圧低下を瞬時電圧低下と言う。
②-1 その影響について
- 機器の瞬時電圧低下耐量を第2図に示す。
- この中で、パワーエレクトロニクス応用可変速モータに着目すると、15%程度の電圧低下が 0.01秒程度継続すると停止等の影響が発生することがわかる。
また、電磁開閉器(マグネットスイッチ)に着目すると、50%程度の電圧低下が0.01秒程度継続すると停止等の影響が発生することがわかる。 - 故障発生から除去までの電圧低下時間は、前述のとおりどんなに早い場合でも0.07秒程度なので図に示すように多くの機器が影響を受けることになる。
- 154kV、66kV、6.6kV等の電力系統では、電圧低下時間が更に長くなる。
- お客さま1軒あたりでは、地域や年によって大きく異なりますが、年に数回程度のようです。
- 影響を受ける機器は第2図は一部であり、実際は様々なものがある。
②-2 現状の対策について (紙面の都合上、極簡単にします)
- 無停電型CVCF電源装置(バッテリー付き)が無いコンピュータ
:停電対策としては、無停電型CVCF(バッテリー付き)電源装置を設置する。
:瞬低対策としては、電源部の直流部分に小容量の電池を接続する等。 - マグネットスイッチを使用しているモータ
:マグネットスイッチを遅延釈放式にする等。 - サイリスタ等を使用している可変速モータ
:モータの制御方式を改善する等(電圧が復帰した後、自動的に正常運転化)。 - 高圧放電ランプ
:瞬時再点灯形にする等。
③-1 電圧低下発生時、すみやかに電力系統から切り離す方法
- 現在広く用いられているUPSによる方法(第3図 参照)は、性能は申し分ないが、一方で設備やロスの面で高価となる(回路構成面から整流器とインバータが必要)。(なお、UPS方式の従来のバッテリーに代えて、NAS電池やレドックスフロー電池等を用いた新しいタイプが逐次実用化されつつある)
- この改善策として、電圧低下発生時に1/2サイクル以下で遮断できる高速開閉器を用いて電力系統から切り離す方法(第4図参照)が採用されつつある。
(この場合の電源としてもNAS電池やレドックスフロー電池等を用いた新しいタイプが逐次実用化されつつある)
(高速開閉器としては、サイリスタや真空遮断器等が使用されている)
③-2 コンデンサやフライホイールを活用し、極力電圧が低下しないようにする方法
- 第5図はコンデンサを用いて、電圧低下を少しでも抑える方法を示す。
- フライホイール(や超電導コイル)を活用した方式についてもしばしばば報告されている。
- いずれも短時間だけ低コストで電圧低下を抑える(または補償する)もので、設備的には整流器とインバータを備え、電源周波数に合わせて制御する。
- 開発経緯や実用化の動きについての説明や記事はよく見かけますが、実適用上の技術面の留意事項や実績に関するものは現時点では少ないようです。具体的実施の場合には、これらにも注意しつつ進める必要があると思います。
- 実務上でトラブル調査の際、電力系統側で瞬時電圧低下があったかどうか知りたいケースがあります。このため最近では、瞬時電圧低下を簡易に測定する装置が開発され、事故調査や解析用として採用されています。