スポットネットワーク配電方式について、受電設備の構成、スポットネットワーク方式の一般的特徴、線路の特徴、本方式を採用する場合の留意事項、ネットワークプロテクタの機能と不要動作について解説
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スポットネットワーク受電設備は第1図に示すように、常時2~4回線の22kVまたは33kVの特別高圧配電線から受電し、各回線の変圧器二次側を連系した方式で、配電線1回線が停止しても何の支障もなく受電できる方式である。
スポットネットワーク受電設備を変圧器の二次側電圧で分類すれば、高圧スポットネットワーク受電設備及び低圧スポットネットワーク受電設備があるが、我が国では直接使用電圧となる低圧スポットネットワーク方式が採用されている。
変圧器単器容量は受電回線によって決定されるが、プロテクタ遮断器やテイクオフ装置から変圧器の単器容量は、現行では一般的に2,500kVA以下であり、これを超える単器容量が必要な場合は、複数のスポットネットワーク受電を行う。
また、変圧器単器容量の決定に際しては、ネットワーク変圧器の過負荷特性を 100%負荷連続運転後、130%負荷で8時間の過負荷運転を行うとして、次式で計算を行う。
第1表に主要構成機器一覧を示す。
- 特別高圧側設備及び保護装置が簡素化できる。
ネットワーク変圧器から電源側の系統事故を変圧器の低圧側に施設したネットワークプロテクタ(プロテクタ遮断器、プロテクタヒューズ、電力方向継電器で構成される)によって検出して保護を行うため、受電用遮断器やその保護装置の省略が可能であり、設置スペースの縮小と経費の節減ができる。
- 高信頼度が確保できる。
20kV級配電線やネットワーク変圧器などの故障は、変圧器の低圧側に設けたプロテクタと、供給変電所の送出し遮断器によって自動除去するため、需要家停電はネットワーク母線以降に事故がない限り発生しない。
- 取引き計量装置を簡素化できる。
特高受電であるが、取引きのための計量は一般的に二次側計量となるため、MOF装置を簡素化できる。
- 保守・点検が容易である。
ネットワーク母線以外の設備の保守・点検に際し、負荷制限や負荷停止を伴うことがなく、随時必要箇所から切り離して、安全かつ的確に作業を行うことができる。
- ネットワーク変圧器二次側は、通常、Y結線とし、240/400Vとしている。
- 自動化によって受電設備運転の省略化が図れる。
ネットワークプロテクタによる自動制御機構によって、事故などに際し、自動的に系統の操作ができ、運転の省略化が図れる。
- 需要家の電力需要規模に対し適用性が広い。
500kW程度の小規模需要から、10, 000kW以上の大規模需要まで広く供給でき、かつ、レギュラーネットワーク方式を組み合わせることによって、低圧需要にも供給することができる。
- ネットワーク線の常時稼働率を高めることができる。
ループや本線予備線方式は稼働率の最大が50%であるが、スポットネットワーク方式は標準3回線として67%と稼働率を高めることができる。
- ネットワーク線は樹枝状系統であるため、面的に広がる需要家群の供給に適し、需要変動に対し線路の弾力性が高い。
スポットネットワーク方式は樹枝状配電線にT分岐で接続されるため、需要家の新設などに対し対応が行いやすく、面的に広がる需要家群の供給に適する。
(a)ネットワーク系統の保護協調
ネットワークプロテクタは№5に述べる三つの特性を満足するとともにその過電流引外し装置は、変圧器、電線のI-t 特性より下側にあることが必要である。また、高圧配電線フィーダのCBとの協調も必要である。具体的には以下のような理由による。
① 二次側及び幹線保護装置の遮断容量が大きくなる。
ネットワーク母線が短く、バスダクトなどでネットワーク変圧器群を並列するため短絡容量が大きくなり、そのため低圧幹線以降の負荷設備の短絡電流強度・保護協調に留意する必要がある。
② ネットワーク母線には高信頼度が要求される。
従来方式の二次側母線は必要によって分割できるため、事故の場合は区分して受電することが可能であるが、スポットネットワーク方式では全停となることから、事故の起きにくい、更に事故の影響を受けにくい構造とする必要がある。
③ プロテクタ遮断器を中心としたインタロック回路を確立する必要がある。
ネットワーク系統の運用は需要家のネットワーク母線まで影響する。需要家側としてはプロテクタ遮断器の開閉が中心となることから、誤操作防止インタロック機構を備えなければならない。
また、需要家内受電設備の開閉器の開閉状態が系統運用及び作業安全に大きく影響を及ぼすため、操作指令責任を明確にする必要がある。
(b)配電方式
低圧バンキング方式と同様、電灯動力共用三相4線式とするが、低圧バンキング方式の場合より一般に大きなブロックを形成するため、Y結線方式とする。
(c)ネットワーク用変圧器
ネットワーク用の変圧器は短絡電流抑制及び変圧器間の負荷分担を均等にするため、インピーダンスと過負荷耐量の大きいものを選定する。また、変圧器間の横流が生じないよう、変圧器タップは同一とするとともに、高圧回線間の電圧に不ぞろいが生じないように考慮する必要がある。
更に受電設備の増設や増容量が困難であるため、増設する場合は、20~30kV級のケーブルと受電変圧器の新設または取替えが必要となることから、設備計画は最終需要を見込んで行う必要がある。
スポットネットワーク方式の保護装置としては、高圧側の停電に対するほかの高圧回線からの逆流を防止するためにネットワークプロテクタが使用される。
ネットワークプロテクタはネットワーク変圧器の低圧側にあって、自動再閉路特性及び開閉制御の機能を、最も簡単な構造の下に満足させるようにした一種の遮断装置で、遮断器部と継電器部とからなっており、次の三つの機能をもっている。
(a)無電圧投入特性
ネットワークに供給する全フィーダが変電所で遮断されている状態で、いずれかのフィーダが投入する。これを無電圧投入特性という。
(b)過電圧(差電圧)投入特性
ネットワーク側が活きている状態において、プロテクタが開かれている変圧器が一次側から充電されてきた場合には、変圧器の二次側の電圧とネットワーク側の電圧との関係が、プロテクタが閉じたときに、電流が変圧器からネットワーク側へ流れ込む状態にあるときに限って閉路する。これを過電圧投入特性という。
(c)逆電力遮断特性
ネットワークに供給するフィーダが変電所で遮断されると、ネットワーク側から変圧器側へ逆電流が流れる。これを遮断する機能を逆電力遮断特性という。
ネットワークプロテクタ継電器のこれら動作特性は微妙で、整定誤りや、特性そのものによって不必要動作が発生する。これら不必要動作の代表例をあげれば次のとおりである。
(a)受電電圧の不ぞろい
受電系統の1回線にネットワークで受電しない大きな負荷があったり、受電回線の線路こう長に著しい差があったりすると、受電電圧の高い系統から低い系統へ、ネットワーク変圧器を通じて逆電力供給となり、ネットワークプロテクタ継電器の不必要動作が発生する。
(b)回生電力による逆電力発生
スポットネットワーク負荷として大きな電動機負荷があった場合など、その回生電力によってスポットネットワーク負荷に供給しても、まだあまりがある場合は線路へ逆電力供給となり、ネットワークプロテクタ継電器の不必要動作が発生する。
回生電力はエレベータの制動時、誘導電動機、無負荷始動時の始動電流消滅時などに発生する。これら回生電力による不必要動作防止策としては、
- 逆電力遮断時間を延ばす。
- 多回線同時逆電力発生時に継電器をロックする。
- エレベータ回路、逆電力発生時に継電器をロックする。
- ダミー負荷の挿入
などが考えられるが、継電器の時限を延長することは、本来の機能を消滅することになり望ましくない。
(c)継電器動作時限の不ぞろい
第2図のようにスポットネットワーク需要家A、Bの電源側で断線事故が発生した場合、A需要家が逆電力遮断をしたにもかかわらず、B需要家は動作時限が長いため、その間にA需要家は過電圧投入する。このことがB需要家が逆電力遮断を行うまで続くこととなる。
(d)ネットワーク母線の進み力率
第3図(c)の逆電力遮断特性から、ネットワーク負荷として大きな進み電流を取った場合、不必要動作となる可能性があるので、ネットワークの負荷の力率には十分注意しなければならない。