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社団法人日本電気技術者協会 電気技術解説講座 文字サイズ変更ヘルプ
Presented by Electric Engineer's Association
系統連系技術(2010) 第2回  技術面の動き 株式会社 高岳製作所 松田 高幸

最近、太陽光発電や風力発電などの大量導入の話題が一段と大きくなっています。今までにも「分散電源に対する系統連系技術要件」に関し、変遷や技術課題などについて解説されていますが、最新の動きと長期的見通しなどを含めQ&A形式で解説する。

Q(質問)---- 第1回に同じ

 最近、太陽光発電や風力発電などの大量導入の話題が一段と大きくなっています。今までにも「分散電源に対する系統連系技術要件」に関し、変遷や技術課題などについて解説されていますが、最新の動きと長期的見通しなどを含めた解説をお願いします。できれば、「系統連系技術要件の動き」、「技術的課題と改善に関する動き」、「今後の課題、長期的見通し」などをお願いします。

A(回答)

 系統連系技術要件は昭和61年8月に策定され、以後、分散型電源の系統連系に関する検討の都度、見直しされてきました。

 前回の解説では平成10年3月改訂までを主対象にしているので、確かに古くなってきたが、きめ細かく説明しています。これに対し最近の動きはとても幅広いので、本解説では大きな流れを把握することを目標にします。

 「第2回 技術面の動き」では昭和61年から平成22年までについて、長期的な見通しを念頭に解説します。

(1)技術面に関する系統連系技術要件の動き

(a) 高圧連系容量について

 現在では(平成10年3月以降)、「配電用変電所のバンクにおいて、常に逆潮流が生じないこと」と定められている。なお、逆潮流とは、「需要家構内から電力系統側へ向かう電力潮流」をいう(いつもは系統側から需要家側へ流れる)。

 ① 配電用変電所のバンク単位で逆潮流が発生すると、電圧管理や保護協調面で問題が生ずるおそれがあるほか、バンク単位の単独運転の可能性もある。単独運転になると安全面、品質面での課題が多くなる(詳細は後述。第3図など)。

 ② このため分散型電源の容量は初期のころはバンク容量の10~20%以下とするなど、高圧連系容量を極力抑える表現であったが、要望に沿って改訂の都度、緩和方向になった。

(b) 単独運転防止について

 単独運転とは電力系統から切り離され、分散型電源が近傍の一般負荷等をもって単独運転している状態をいう。技術要件検討ではいつも話題になっている。

 ① 特別高圧系統では現在(平成7年10月以降)、単独運転防止策を「周波数低下継電器(UFR)」と「周波数上昇継電器(OFR)」で 行うことが多い。

 ② その前は転送遮断装置が用いられていたが、この方式では「大規模な電源に対して複雑になり、実用上限界がある」ことから、平成7年10月の時点で選択できるようになった。すなわち、実質上UFR、OFR方式になった。

 ③ このことは周波数が所定の範囲にある場合(発電力と負荷がある程度均衡している場合)は、単独運転になることを暗黙の内に認めていることになる(単独時の周波数調整が可能であれば、停電防止の面から望ましいとの見方もある)。

 ④ 高圧系統等でも緩和傾向にあり、現在(平成5年3月以降)、一般配電系統ではほとんどの場合、単独運転防止策を「単独運転検出装置」により行っている。

 ・ガイドライン上は転送遮断方式との選択になっている。

 ・なお、転送遮断装置とは、変電所遮断器の遮断信号を伝送し、分散型電源の受電遮断器を遮断させる装置をいう。

 ⑤ 「単独運転検出装置」は能動型と受動型に大別されるが、いずれも分散型電源が多くなると機能面で課題があるといわれている。このため今後の実績や技術の進歩を反映していくことになっている。

 ・このあたりの運転実績はあまり聞こえてこない

 ・一方で単独運転検出装置の機能向上については、懸命の努力が続けられている模様である。最近では新手法や実証結果などが報告されている(良好な成績)。

(c) 保護継電器について(OVGR省略の一例)

 地絡事故発生時は地絡現象そのものを的確に検出して事故除去することが原則になっているが、OVGRについては以下のような経緯がある。

 ① 発電機設置箇所には地絡過電圧(OVGR)を設置することが一般的である。しかしながら、現行ガイドラインでは発電力≪負荷で周波数低下継電器による単独運転検出ができ、確実に発電機を解列できる場合は省略可としている。

 ② その後、当該系統の発電力が増加し、発電力≒負荷となり、周波数低下継電器による単独運転検出が困難となった場合、発電機設備設置箇所に改めてOVGRを設置する必要がある。

 ③ 前述のような議論も継続していたが、最近(平成21年追補版)の「系統連系規定」では、このあたりの改善が進んでいる。すなわち、「系統連系規定」の改訂により、地絡過電圧継電器(OVGR)を省略して連系し、後に省略不可能になった場合には、省略した発電設置者の責任において、必要となる設備を設置することが明記された。

(d) 運用実務と関係が深い項目

  平成7年10月改訂の中で詳しく検討され、おおむね現時点につながっている。

 ① 系統連系保護継電器(旧に対して、以下が加わった)

  ・短絡保護(方向比較方式または電流差動方式)

  ・地絡保護(直接接地:電流差動、高抵抗接地:方向比較または電流差動)

 ② 単独運転防止(旧(転送遮断)に対して、以下が加わった)

  ・「OFR及びUFR」または「転送遮断装置」

 ③ 過負荷保護 詳細略(旧に対して、特に10万V以上は強化)

 ④ 線路無電圧確認装置 

 ・この時点で追加(原則設置、ただし逆潮流なしで2系列化の場合は省略可)

 ⑤ 電圧変動  詳細略(常時の1~2% → 常時の2%に変更)

 ⑥ 短絡容量  詳細略(旧の限流リアクトルに対し、幾つかの方法が追加)

 ⑦ 発電機運転制御装置

 ・この時点で追加(原則10万V以上に対し、必要な運転制御装置を設置)

 ・例えば、卸供給事業者の発電設備の設計に関連して、電力会社の事例を示すなど、運転機能の維持に注視している(第1表)。

 ・また、第1図に技術検討に当たってのフロー図を参考に示す(実務における参考資料として作成されたもの。オーソライズされたものではないが、技術検討面で参考になる)。

 ⑧ 中性点接地装置の付加と電磁誘導障害対策の実施

 この時点で追加。内容は以下のとおり。

 ・原則10万V以上の電線路に連系する場合であって、中性点の接地が必要な場合には発電設備の設置者は、変圧器の中性点に接地装置を設置する。

 ・必要な場合は電磁誘導障害対策、地中ケーブルの防護対策の強化などの適切な対策を講ずる。

 ・第2図に技術検討にあたってのフロー図を示す(実務における参考資料として作成されたもの。オーソライズされたものではないが、技術検討面で参考になるので示す)。

 ⑨ 連絡体制  詳細略(旧の保安通信用電話に加え、SVやTMにも言及)

(2)報告されている課題

  講演会や文献などでは、以下のような課題が報告されている。

 ① 電圧変動に関する課題

 :分散型電源が多くなるほど顕著になる。

 ② 単独運転継続による電気の品質面の課題

 :分散型電源が多くなると単独運転検出装置の機能が充分かどうか定かでない面がある。すなわち、単独運転が継続して電気の品質面での問題が考えられる(第3図に単独運転の形態例を示す)。前述((1) (b) ⑤)のように、最近では新手法や実証結果などで、良好な結果である旨の報告がなされている。

 ③ 安全に関する課題

 :分散型電源の増大によって各種形態の単独運転が想定されるので、安全に関する問題が増大していくおそれがある(安全については、単独運転以外でも、いろいろなケースが考えられる)。

 ④ その他、ケースによっては短絡電流の増大、周波数変動、保護継電器の問題、高調波、電圧フリッカなども話題になることがある。

(3)系統連系技術要件に関連する新しい技術面の動き

(a) 配電系統を有効に活用する検討・動き

  ごく最近ではあまり見掛けないが、一時期は多くの報告が続いた。

 ① 分散型電源が一層増大することを念頭に、配電系統をループ運用する方法の研究が進み、かなり突っ込んだ試験結果などの報告もあった。

 ② ループ運用のための装置は、いろいろな機能が求められるため「交流・直流変換器による装置」が報告されている。また、新しい制御装置に関しても概要報告されている。

(b) 風力発電設備や太陽光発電設備の系統連系技術要件の動き(例)

 風力発電設備の普及率が大きいヨーロッパでは、セキュリティーの面から次のような系統連系に関する要件が検討され、逐次進められている。

 ① 電圧低下時にも極力連系を維持する(例えば、80~100%の系統電圧に対して運転を維持するなど)。

 ② 周波数が所定の範囲では連系維持し、周波数上昇時は出力を制御する(例えば、所定の範囲(47.5~51.5Hz)、上昇時(50.25~51.5)など)。

 我が国でも同様の動きがある。特に太陽光発電設備については、全体の電力量が大きくなることから熱心な検討が行われている。周波数については前述と同程度であるが、電圧低下についてはもっと厳しい条件のようである(例えば、30%程度の系統電圧に対し、0.2~1.0秒程度運転を維持するなど(詳細は検討中))。

 特別高圧系統に連系する大型の発電設備などの周波数耐量についても、前述と同様の動きがある。瞬時電圧低下についても同様である。

(c) その他の動き

 その他、次のような検討・調査が進められており、新たな課題や解決方法などの動きがある。この場合、コスト面の検討・分担も重要になる。

 ① 分散型電源が増大した場合の各種シミュレーション解析の推進

 ② いろいろな分散型電源が接続されている場合の単独運転検出装置の機能

 ③ 逆潮流時の電圧変動を調整する装置(SVR、SVCなど)

 ④ 記録装置の設置と事故時の分析

 ⑤ その他、保護継電器、周波数変動、高調波、電圧フリッカなど

 保護継電器の内、地絡過電圧継電器(OVGR)に着目すると、前述(2.(1)(c))のとおりであり、全体的にみてきめ細かな検討が進められている。