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3巻線変圧器は2巻線のものに、絶縁されたもう一つ出力巻線を追加して同時に二つの出力を取り出すもので、1相当たり三つの巻線をもった変圧器である。ここでは電力系統で使用されている三相3巻線変圧器について述べる。
電力系統で用いられている275kV以下の送電用変圧器は、第1図に示すように一次巻線(高圧側)スター結線、二次巻線(中圧側)スター結線、三次巻線(低圧側)デルタ結線とするが、その結線理由は次のとおりである。なお、電力は一次巻線から二次巻線に送電する。
電力系統では電圧階級毎に中性点を各種の接地装置で接地する方式を適用するので、中性点をつくる変圧器は一次及び二次巻線共にスター結線とする必要がある。
また、一次巻線、二次巻線共にスター結線とすると次のようなメリットがある。
① 一次巻線と二次巻線間の角変位は0°(位相差がない)なので、変電所に設置する複数の変圧器の並列運転が可能
② すべての変電所でこの結線とすることで、ほかの変電所との並列運転(送電系統を無停電で切り替えるときに用いる短時間の変電所間の並列運転)も可能
③ 変圧器の付帯設備である負荷時タップ切替装置の取付けがスターであることによってその中性点側に設備でき回路構成が容易
以上のようなメリットがある反面、変圧器にデルタ巻線が無いことによって変圧器の励磁電流に含まれる第3調波により系統電圧が正弦波電圧ではなくひずんだ電圧となってしまうことを補うため第3調波電流を還流させるデルタ結線とした三次巻線を設備するので、結果としてスター・スター・デルタ結線となる。
なお、66kV/6.6kV配電用変圧器では三次巻線回路を活用しないので外部に端子を引き出さない。これを内蔵デルタ巻線と呼ぶ。
第2図に内鉄形の巻線構成を示す。いちばん内側を低圧巻線、外側に高圧巻線、その間に中圧巻線を配置する。高圧巻線を外側に配置する理由は鉄心と巻線間の絶縁距離を長くするためである。第3図に変圧器引出し端子配列を示す。
変電所では変電所単位でその一次(高圧)側から見た負荷力率を高目に保つほど受電端電圧を適正値に保つことができる。第4図のように負荷を送り出す二次巻線回路の無効電力を三次巻線回路に接続する調相設備で補償し、一次巻線回路を高力率化させる。
調相設備としては遅れ無効電力を補償する電力用コンデンサ、進み無効電力を補償する分路リアクトルがある。おおむねすべての送電用変電所では電力用コンデンサを設備し、電力ケーブルの適用が多い都市部では分路リアクトルも設備される。
2巻線変圧器では一次巻線と二次巻線の容量は同一となるが、第4図のように3巻線変圧器では二次巻線のほうが大きな容量が必要となるが、実設備は第1表のように一次巻線と二次巻線は同容量としている。
第1表に電力系統で使用されている送電用三相3巻線変圧器の仕様例を示す。
なお、過去には二次巻線容量が一次巻線容量の1.1倍の変圧器もあったが、現在では一般的ではないと思われる。
二次巻線及び三次巻線の合成(ベクトル合成)が電源側の一次巻線容量となるので、第1表のように二次巻線と三次巻線の容量の算術和が一次巻線容量とはならない。
三次巻線容量は調相設備容量を満足すればよいので、一般的には一次巻線容量の30%としているが、電力用コンデンサの容量を多く設置したい変電所(負荷力率の低い地域供給)では50%とする場合もある。
三次巻線容量は一次、二次巻線容量に比べて小さいので三次回路電圧を低くしている。調相設備は開閉器によって電力系統と接続させるので容量変化が段階的となることから、容量変化による電圧変動量を抑制するため小容量設備を複数台設備するので、三次回路電圧を低目にすることで開閉器類及び調相設備の小型化も図れる。
第5図(a)に一般的に使用されている単相2巻線変圧器の一次側からみた簡易等価回路を、第5図(b)に三相3巻線変圧器の単相分の簡易等価回路を示す。このように一次、二次及び三次おのおののインピーダンスとして表せる。
ここで三次巻線回路に調相設備を接続して力率を改善する様子を147/66/21kV、200/200/60MVA変圧器を用いて系統計算してみる。
まず、基準容量を200MVAに設定し、第5図(b)を参照して各巻線の%インピーダンス値を求める。
Z1+Z2 =Z12
Z2+Z3 =Z23
Z1 +Z3 =Z31
これより、
Z1 =(Z12+Z31-Z23)/2
Z2 =(Z23+Z12-Z31)/2
Z3 =(Z31+Z23-Z12)/2
これらをまとめると第2表となる。
ここで二次巻線はわずかな負値となっているが、負の誘導性リアクタンス成分であるから容量性キャパシタンス成分と扱える。これは多巻線変圧器のインピーダンスを巻線ごとに分解したときに現れる特異性であり、短絡電流や電圧変動の計算には負の値をそのまま使用する。
この値を用いて変圧器2台並列運転しているときに30Mvarの電力用コンデンサ1台を接続したときの無効電力の変化と力率改善状況を第6図に示す。