電気機器・線路は使用中に電気的、熱的、機械力及びそれらの複合原因によって劣化します。したがって、絶縁破壊事故を未然に防止するためには絶縁状態を監視する必要があります。
絶縁測定にはいろいろな方法がありますが、直読式の絶縁抵抗計による絶縁抵抗の測定 (メガーリング)が簡便なため、あらゆる電気設備に対して広く行われています。
しかし、絶縁抵抗には次のような特性があるため、これを十分に把握していなければなりません。
(1) | 温度特性が負である。 |
これは同一のものの絶縁を測定しても、そのときの絶縁体の温度によって変化することであり、温度上昇によって絶縁抵抗は低下します。
(2) | 電圧特性も負である。 |
絶縁抵抗は普通測定電圧を高くするほど低い値に測定される。このことは絶縁抵抗計で高電圧機器の絶縁判定をする場合特に留意すべき事項です。
(3) | 吸湿によって大幅に低下する。 |
これが絶縁抵抗測定で絶縁状態を判定する根拠であり、定期的な測定によって測定値の変化から絶縁状態を推定することが大きな目的です。
休止機器再使用時などの電圧印加の可否判定などにもこの特性が利用されています。
絶縁抵抗はふつう絶縁体を貫通する漏れ電流による貫通絶縁抵抗と、絶縁体の表面を流れる漏れ電流による沿面絶縁抵抗の合成として測定されます。
一般に、沿面漏れ電流のほうが大きく、しかも湿度など周囲条件の影響を強く受けます。このため測定時の天候、気温、湿度、使用測定器の仕様、ガード回路の有無
などを詳細に記録しておくことが大切で、これが不備な測定データは絶縁判定上の資料としては価値が小さくなります。
特に、電力ケーブルのように本体部分の絶縁抵抗が極めて大きいものでは、沿面絶縁抵抗を排除して測定することが必要になることもあります。
このため、ガード回路を形成して沿面漏れ電流を測定値に含まないようにします。 長距離電力ケーブルでは相手端の沿面漏れ電流も排除する必要があります。これには
各相ごとに測定し、測定していない相を相手端でガードに接続し、測定端で絶縁抵抗計のガード端子に接続します。
(1)被測定部分の清掃
絶縁体の表面に埃などが付着していると絶縁抵抗は小さく測定されるので、支持碍子はできる範囲で清掃しておくことが望ましい。また、機器単体の測定では
ブッシングの清掃は欠かせません。
この場合、他の充電部に対する作業安全対策は当然です。
(2)静電容量の大きな回路の測定
コンデンサ、電力ケーブルなど静電容量の大きな電路の測定では、充電電流が大きく、測定開始時は短絡と同じ値を示します。十分に時間をかけて指示が安定したときの値を読み取らなければなりません。
(3)測定後の放電
静電容量の大きい機器、電路の絶縁抵抗測定を行うと、測定電圧がほとんどそのまま残留し、感電の危険があります。このため、測定後に必ず残留電荷の放電をしなければなりません。
携帯型絶縁抵抗計には放電回路を備えたものもあり、被測定回路にリード線を接続したまま測定スイッチをOFFにすれば自動的に放電します。
低圧電路では使用電圧と絶縁抵抗計の電圧からみて、その結果をそのまま絶縁状態と判定してよく、電気設備技術基準では電気使用場所の低圧電路の絶縁は、開閉器・遮断器で区分できる電路ごとに第1表以上と規定されています。
電路の使用電圧の区分 | 絶縁抵抗値 | |
300V以下 | 対地電圧(接地式電路においては電線と大地間の電圧、非接地式電路においては電線間の電圧をいう)が150V以下の場合 |
0.1MΩ以上 |
その他の場合 |
0.2MΩ以上 | |
300Vを超えるもの | 0.4MΩ以上 |
高圧・特別高圧では使用電圧に対して絶縁抵抗計の測定電圧は低く、また、高絶縁抵抗が必ずしも高耐電圧ではなく、特別高圧では絶縁抵抗計による測定は、電圧を印加する前に重大な欠陥がないことの確認手段程度です。
このため、電気設備技術基準でも高圧、特別高圧については絶縁耐力で絶縁性能を規定しています。
しかし、絶縁抵抗からの絶縁状態の判断目安は以前から幾つかがあります。
第2図は油入変圧器に対するもので、特に温度による絶縁抵抗の変化が考慮されています。また、次の2式も目安として使われています。
絶縁抵抗[MΩ]>
絶縁抵抗[MΩ]>
絶縁抵抗計による絶縁判定は絶対値だけによらず、定期的な測定による変化からの判定あるいは他の絶縁測定法での結果との総合判定が大切です。