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現在、インターネットは第1図のようなイメージで全世界に広がっている。
第1図 インターネットの構成イメージ
以下、それぞれの構成要素について説明する。
(1) ローカルエリアネットワーク(LAN)
会社や学校など一つの建物の中にあるコンピュータやプリンタなどはお互いにケーブルでつながれている。このようなネットワークをローカルエリアネットワーク(LAN)と呼ぶ。現在最も一般的な形は「ハブ」を中心にしてコンピュータやプリンタなどをケーブルでつないだものとなっている。
(2) プロバイダ(ISP)
会社や学校などがインターネットを利用する場合、LAN をプロバイダにつなぐ。プロバイダは ISP(インターネットサービスプロバイダ)とも呼ばれる。LAN とプロバイダとの間は多くの場合、専用線で結ばれる。また、LANをインターネットにつなぐためには「ルータ」を用いる。「ルータ」はネットワーク内でやりとりされているデータパケット(データの固まり)を正しい宛先に届けるルーティング機能を果たす。一方、家庭内のパソコンなどの情報機器は電話回線やケーブルテレビを介してISPとつながる。
(3) 階層をなすプロバイダ
プロバイダは階層をなしており、大きなプロバイダ(一次プロバイダ)の下には中位のプロバイダ(二次プロバイダ)がつながり、更にその下にもプロバイダ(三次プロバイダ)がつながるような構造になっている。通常、大きなプロバイダは全国的なサービスをしているが、小さなプロバイダは地域を限定した形でサービスを提供している。
(4) 各国プロバイダ間の接続
大きなプロバイダの多くはアメリカのプロバイダと大容量の回線でつながり、インターネットの国際的な接続を確保している。これは世界各国のプロバイダがアメリカのプロバイダを軸にして相互につながっているためである。例えば、日本とシンガポールの間で通信をする場合であっても、データパケットは必ずアメリカを経由するという形になっている。ただし、最近はアメリカ以外への接続も増えてきている。
(5) IX(インターネット・エクスチェンジ)
各国の国内には、IX(インターネット・エクスチェンジ)と呼ばれるポイントがある。IXは国内の大規模プロバイダ同士を相互につなげるためのものである。もしIXがなければ、日本国内のプロバイダ同志であっても、いったん、米国のプロバイダを経由して接続しなければならない。
以上のようにインターネットは一つの組織・ネットワークとして管理されているのではなく、各国のISPなどがそれぞれのネットワークを管理している自律分散システムである。このためどこかの国のあるネットワークに事故が起きても、それ以外の場所では問題なく動き続けることが可能である。
インターネットは「インターネットの構成」で述べたような物理的な構成をもつが、インターネットに接続された情報機器相互の接続性を実現するには、通信の手順などの取り決めが必要である。この取り決めがプロトコルであり、インターネットに関するプロトコルの定義の多くはIETF(Internet Engineering Task Force)が規定する RFC(Request For Comments)として公開されている。IETFは極めてオープンな組織で、実際の作業を行っている作業部会のメーリングリストに参加することで、だれでも議論に参加することが可能である。
(1) IPアドレス、ドメイン名
インターネットに接続する情報機器は全世界で一意の「IPアドレス」と呼ばれる固有番号をもつ必要がある。学校や会社などの各組織に対して固有のIPアドレスの領域(範囲)がそれぞれ割り当てられ、更に各組織はその領域の中から所有する情報機器それぞれに固有のIPアドレスを割り当てる。
IPアドレスは数字の羅列のため、一般には英数字を使用した名前(ドメイン名)をIPアドレスに対応させて用いる。例えば、「jeea.or.jp」というドメイン名は「219.94.128.214」というIPアドレスに対応する。インターネットに参加する各組織に対して、識別子としてドメイン名が割り当てられており、各組織は所有する各コンピュータに対してホスト名を割り当てる。ホスト名とドメイン名をドット(.)でつないだものが各コンピュータの固有名となる。
インターネット上にはドメイン名とIPアドレスの対応リストをもったDNS(Domain Name Server)と呼ばれる機器が複数存在し、ドメイン名に対応するIPアドレスを返してくれるため、相手先のIPアドレスに代わってドメイン名を指定することによって通信が可能である。
なお、現在主に利用されているのは32ビットのアドレス空間をもつIPv4(IPバージョン4)であるが、IPアドレスの枯渇が予測されることから、128ビットのアドレス空間をもつIPv6(IPバージョン6)が作られ、最近のネットワーク機器ではこれに対応している。
(2) 通信手順(プロトコル・スタック)
ネットワークを介して通信する情報機器はそれぞれ決められた通信手順を実行するプロトコル・スタックと呼ばれるソフトウェア(一部ハードウェア)を備えている。プロトコル・スタック(第2図)は複数の層からなっており、下から、ネットワーク層、トランスポート層、アプリケーション層となっている。インターネットの場合、ネットワーク層のプロトコルはIP(インターネット・プロトコル)と呼ばれ、IPアドレスに従ってあて先にデータパケットを届ける役割をもっている。トランスポート層にはTCP(トランスポート・コントロール・プロトコル) と UDP(ユーザー・データグラム・プロトコル) があり、どちらもネットワーク層とアプリケーション層との橋渡しをする役割をもつが、TCPは相手先からの受信確認をとるため確実なデータ伝送を必要とするアプリケーションに使用され、UDPは伝送速度を重視するアプリケーションに使用される。アプリケーション層にはコンピュータを遠隔操作するためのTelnet、ファイル転送のためのFTP、WWW で用いられる HTTP、動画のストリーミング配信に使用されるRTSPなど、アプリケーションに応じた様々なプロトコルが存在する。
第2図 プロトコル・スタック
(1) インターネットの歴史
・1969年 冷戦時代のアメリカで国防用コンピュータネットワーク構築を主目的に、前身の「ARPANET」(アーパネット)が開発された。軍事的攻撃を受けても維持できる通信網の研究を行った結果、電信をモデルとして特権的なコントローラをもたない通信網を実験的に作りあげた。これがインターネットのはじまりである。これは最初、ARPANETの研究計画に参加している大学や研究所のコンピュータを相互に結びつけることから始まった。最初はたった4台のコンピュータを結んだネットワークで、回線速度はわずか50kbpsだったという。
・1970年代 電子メール、Telnetなどがアメリカの大学で使われ始める。
・1982年 ARPANET のプロトコルとしてTCP/IP が完成。
・1984年 日本では慶大と東大などを接続したJUNETが作られる。
・1986年 軍事用のARPANETから分割される形で、学術研究用のネットワーク基盤NSFNETが作られ、徐々に大学などの大型コンピュータとも結び付き世界中に広がりをみせた。IETFとIRTF(インターネット・リサーチ・タスクフォース)というグループが設立された。これらのグループがインターネットの技術標準(RFC)を作っていく場となった。
・1989年 日本が NSFNET に接続される。NSFNET は当時インターネットのバックボーンとして動いていたため、日本のインターネット接続元年といえる。
・1990年 ARPANET のプロジェクトが終了。ワールド社がインターネット ダイヤルアップ接続を提供する世界初の商用プロバイダとなった。
・1991年 フランス・スイス国境上にある素粒子物理学研究所・CERNの研究員がWorld Wide Webプロジェクトを発表する。
・1992年 AT&T Jens社が 日本初の商用インターネットサービスプロバイダとしてUUCP接続サービスを開始した。
・1995年 NSFNETは民間へ移管され、Windows95の登場で一般個人でのインターネットの利用に加速がついた。
・1999年 日本で携帯電話のインターネット接続サービスが開始された。
以降、世界的に爆発的に利用者が増加し、今日に至る。
(2) インターネットの統計(データソース:ITU)
(a) 各国のインターネット利用者数(2007年時点)
2007年現在、インターネット利用者数は1位:アメリカ(2.2億人)、2位:中国(2.1億人)、3位:日本(8,800万人)、4位:インド(8,100万人)となっている(第3図)。
(b) 各国のインターネット利用者率(2007年時点)
2007年現在、インターネット利用者率(人口に対する利用者数の割合)は1位:オランダ(91%)、2位:カナダ(85%)で、韓国、アメリカが4位(72%)、日本は6位(69%)となっている。なお、利用者数上位の中国は24位(16%)、インドは27位(7%)である(順位は利用者数500万人未満の国を除く)。
(c) 世界の地域ごとのインターネット利用者推移
世界の地域ごとの利用者数を棒グラフで示した。アジア地域での利用者数の増加が大きく、2008年現在で、最大勢力となっている。一方、利用者率(折れ線グラフ)では、依然(2008年現在)、欧米圏とそれ以外の地域では差がある。