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社団法人日本電気技術者協会 電気技術解説講座 文字サイズ変更ヘルプ
Presented by Electric Engineer's Association
ラプラス変換とその使い方7<過渡現象編6>ラプラス変換等価回路による交流過渡現象の解き方(1) 元東京電機大学短期大学教授 間邊幸三郎

電磁気現象は微分方程式で表され、一般的には微分方程式を解くための数学的に高度の知識が要求される。ラプラス変換は、計算手順さえ覚えれば、代数計算と変換公式の適用により微分方程式が解ける数学知識への負担が少ない解法である。このシリーズでは電気回路の過渡現象や制御工学等の分野での使用を念頭に置いて範囲を限定して、ラプラス変換を用いて解く方法を解説する。今回は、ラプラス変換等価回路について解説する。

1.s記号式計算法

  1  電源、電流、回路定数をラプラス変換してs関数に直して(s記号式表示)、s回路をつくる。

  2  s回路より求めたい量のs関数Xsを求める。(s回路計算

  3  X(sをラプラス逆変換して、求めたい量のt関数x(tを算出する。(逆変換

第1図 s記号式計算法の計算の流れ
第1図 s記号式計算法の計算の流れ

2.抵抗負荷の短絡

 【例題1】 第2図の交流回路が定常状態にある時、t=0の時、スイッチSを閉じてR2を短絡した場合、回路にはどんな電流が流れるか求めよ。  

第2図
第2図

 【解答】 この問題のs回路は、Sが投入された回路、つまりR2が短絡された状態の回路で、第3図となる。

第3図 s回路
第3図 s回路

 同図において、i(0)はR2が短絡される直前にLを流れている電流で、

formula001
formula001

となる。電流I(s)は、

formula002
formula002

 上式の第1項は、複素起電力法によれば、

formula003
formula003
formula004
formula004

 (7)式を次のように逆変換して、その虚数部を採れば、電流 formula005 formula005 が求まる。

formula006
formula006

 次に、(4)式第2項の電流 formula007 formula007 は、

formula008
formula008

なので、電流 formula009 formula009 は、上式を逆変換して、

formula010
formula010

 求める電流は、

formula011
formula011

 電流 formula012 formula012 のグラフは第4図となる。

第4図 電流
第4図 電流

formula013
formula013

3.抵抗負荷の接続

 【例題2】 第5図の回路が定常状態にあるとき、t=0でSを閉じた時、Lに流れる電流を求めよ。

第5図
第5図

 【解答】 この場合のs回路は、第5図の回路でSを閉じた状態の第6図となる。

第6図 s回路
第6図 s回路

 同図において、i(0)はSを閉じる直前にLを流れていた電流なので、

formula014
formula014

 S投入後、Lを流れる電流 formula015 formula015 は、s回路により次式が成立する。

formula016
formula016

 ここで、

formula017
formula017

と置く。(17)式第1項の電流 formula018 formula018 は、複素起電力法によれば、

formula019
formula019
formula020
formula020

であり、この計算は第4図下の【参考】の結果から、電流は次式となる。

formula021
formula021

 一方、(17)式第2項の電流 formula022 formula022 は、

formula023
formula023

 求める電流は次式となる。

formula024
formula024
formula025
formula025
 

 第7図に電流のグラフを示す。

第7図 電流
第7図 電流

4.進相負荷の接続

 【例題3】 第8図の回路において、t=0でSを閉じて進相負荷を接続したとき回路にはどんな電流が流れるか。ただし、CにはS投入前、電荷はなかったものとする。

第8図
第8図

 【解答】 この場合のs回路は第9図となる。

第9図 s回路
第9図 s回路

 複素起電力法によれば、 formula026 formula026

formula027
formula027

 上式s関数部の分母にあるsの二次式は、

formula028
formula028

となり、RLCの大小関係によって、

formula029
formula029

の3ケースがある。ここで、

formula030
formula030

とおく。

 ①  formula031 formula031 の場合

formula032
formula032

とおけば、(28)式は、

formula033
formula033

と変形できるので、(27)式の formula034 formula034 は、

formula035
formula035

となる。したがって、巻末の参考計算[3−1]により、複素電流 formula036 formula036 と電流 formula037 formula037 は次の各式となる。

formula038
formula038

 この結果、求める電流は次式となる。

formula039
formula039
formula042
formula042

 第10図にこの場合の電流波形を示す。

第10図
第10図 β>0(振動形)の場合の電流波形

 ②  formula043 formula043 の場合

formula044
formula044

とおけば、

formula045
formula045

となる。この式はβ>0の場合の formula046 formula046 である(34)式において、 formula047 formula047 formula048 formula048 に置き換えれば formula049 formula049 、(40)式が作れるので、複素電流の式もβ>0の場合の(3…16)式で formula050 formula050 とおけば求められ、巻末の参考計算[3−2]によって次式となる。

formula051
formula051

 したがって、求める電流の式は、次式となる。

formula052
formula052
formula053
formula053

 第11図にこの場合の電流波形を示す。

第11図
第11図 β<0(非振動形)の場合の電流波形

 ③  formula054 formula054 の場合

formula055
formula055

なので、 formula056 formula056 は、

formula057
formula057

となり、巻末の参考計算[3−3]によって、電流が次のように求まる。

formula058
formula058
formula059
formula059
formula060
formula060

 第12図にこの場合の電流波形を示す。

第12図
第12図 β=0(臨界形)の場合の電流波形

【巻末資料】

第1表 s回路計算のルール
第1表 s回路計算のルール

第2表 回路定数のs記号式表示
第2表 回路定数のs記号式表示

付表 主要関数のラプラス変換と基本法則
付表 主要関数のラプラス変換と基本法則

参 考 計 算

 参考計算[1] 例題1関連の逆変換公式とその導き方

formula061
formula061
formula062
formula062

 参考計算[3−0] 例題3関連の逆変換公式((3…1)式)とその導き方

formula063
formula063
formula064
formula064

 参考計算[3−1] 例題3の参考計算(1) β>0の場合の逆変換式の求め方

formula065
formula065

 の場合は、上記の変換公式(3…1)式 において、

formula066
formula066

とおき、

formula067
formula067

である場合は、変換公式(3…1)式の各部は、

formula068
formula068

となるので、(3…6)式に逆変換公式(3…1)を適用すると、次のように計算できる。

formula069
formula069
formula070
formula070

 求める電流は、上式の虚数部なので、

formula071
formula071

となる。以上をまとめると次のようになる。

formula072
formula072

 参考計算[3−2] 例題3 β<0の場合の逆変換式の求め方

formula073
formula073
formula074
formula074
formula075
formula075

 参考計算[3−3] 例題3 β=0の場合の逆変換式の求め方

formula076
formula076
formula077
formula077
formula078
formula078
formula078
formula078
formula058
formula058