〜終わり〜
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第1図に示すようにt=0 秒の時点で短絡事故が発生すると(第1図 (a)直流回路でスイッチが開から閉になった状態)、大きな短絡電流が流れる。
この短絡電流Iの大きさは(1)式で示される。電源側の直流電圧は一定とみなせるので、短絡電流の大きさは第1図(b)のように一定となる。電圧は図示していないが、短絡事故点では0V で電源に近づくほど高くなり、電源端ではE〔V〕となる(なお、実際にはいくらかの過渡的な現象があるが、ここでは無視している)。
R:抵抗〔Ω〕
E:直流電圧〔V〕
I:直流電流〔A〕
(1) 単相回路
第2図に示すようにt=0 秒の時点で短絡事故が発生すると(第2図(a)単相回路でスイッチが開から閉になった状態になり)、直流回路の場合と同じように大きな短絡電流が流れる。ただし、交流回路なので電流の大きさは一定(直流)ではなく正弦波となる。
直流回路の抵抗Rに相当するものとして、交流回路ではRのほかにL(インダクタンス)とC(キャパシタンス)があるが、第2図(a)ではRだけとして表している。このようにすると短絡電流iは第2図(b)のとおり電源電圧eと同相になり理解しやすい。数式で見ても(2)式、(3)式のとおり簡単である(電流の実効値Iは(4)式に示すように直流回路と同じ式になる)。
電圧は図示していないが、短絡事故点では0Vで電源に近づくほど高くなり、電源端ではe〔V〕となる。
(2) 三相回路(3相短絡)
第3図に示すようにt=0秒の時点で短絡事故が発生すると(第3図(a)三相回路でスイッチが開から閉になった状態になり)、3相短絡事故となり大きな短絡電流が流れる。三相回路なので事故前の電圧は第3図(b)のように120°位相差の電圧になる。短絡電流も120°位相差の電流になるが、ここではa相に着目し第4図に図示している。
a相回路に着目すると、単相回路のときと同じになる。
R、L、Cや事故中の電圧については前述のとおりであり、説明を省略する。
以上についてa相に着目して説明すると第4図のようになる。すなわち、単相回路の説明とよく似ている(ea、iaのようにa相を表していることに注意)。
なお、a相の電源電圧ea、短絡電流iaは(5)、(6)式となり、また短絡電流の実効値Iは(7)式となる。
(3) 三相回路(2相短絡)
第5図に示すようにt=0 秒の時点で2相短絡事故が発生すると(第5図(a)三相回路でb相とc相間のスイッチが開から閉になった状態になり)、2相短絡電流が流れる。この場合の等価的な回路は、b、c 相の線間電圧を一つの電源ebc、b相とc相の二つの抵抗Rが直列接続されたものを一つの抵抗2Rとみなすと、第5図(b)のようになり、2相短絡事故時の短絡電流ibcは第5図(c)となる。
ここで第5図(b)の回路から短絡電流ibcを数式で求めると以下のとおりとなる。
b相、c相の相電圧は、
であるから、これより線間電圧ebcは以下となる。
したがって、2相短絡電流ibcとその実効値Ibcは以下となる。
(9)式と3相短絡電流の(7)式とを比較すると、2相短絡電流の大きさは3相短絡電流の 倍になることが分かる。
なお、R、L、Cや事故中の電圧については前述と同様に省略する。
ここまでは理解しやすいように抵抗Rだけの回路で説明したが、実際の系統では一般に抵抗Rは小さく、ωLが大きい。このため短絡事故電流を考える場合には、Lを考慮する必要がある。
ここではLがある場合の単相回路の短絡事故電流について、簡単に解説する。第6図(a)に示すようにR - Lで構成された単相回路で、t=t1秒の時点で短絡事故が発生した場合の電流は、短絡事故の発生タイミング(t=t1)によって電流波形(直流分の有無)が相違し、第6図(b)、(c)のようになる。
ただし、ここではωL≫Rの条件としている。第6図(b)は電源電圧の最大値付近で短絡事故が発生した場合で、直流分がほぼ0となる交流の電流波形となる。第6図(c)は電源電圧が0付近のときに短絡事故が発生した場合で、交流電流に直流分が重畳した波形となる。この直流分は事故直後には(図のように)大きな値になるが、その後時間経過とともに減衰し、定常時は交流分のみの電流波形となる。
なお、この短絡電流iを数式で示すと、(10)式のようになる。また、定常時の短絡電流は(12)式、実効値は(13)式となる(数式の導出過程は省略する)。
(10)
(10)
短絡事故時の電圧・電流波形として、電流波形に重きをおいて解説した。また、交流回路ではRだけの回路から始め、Lを考慮したり(電圧に対し位相遅れあり)、事故発生時の位相による違いを考慮したり(直流分の有無あり)、少しづつ複雑になるよう心掛けた。
次は地絡事故時の波形について解説する。